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米FDA諮問委がアデュカヌマブを審査 エビデンス不十分との意見が大半 承認可否は3月までに

公開日時 2020/11/09 04:52
米食品医薬品局(FDA)の末梢・中枢神経系薬物諮問委員会は11月6日、アルツハイマー型認知症治療薬の候補であるアデュカヌマブについて審査し、認知機能低下を遅らせるエビデンスは不十分との見解が大半を占めた。アデュカヌマブの臨床第3相試験は中止から一転主要評価項目を達成したが、2本の試験で主要評価項目の結果がわかれており、エビデンスをいかに評価するかが注目されていた。米FDAは諮問委の開催に当たる資料を公表するに際し、肯定的な所感を示していたが、諮問委は異なる結論を導いた。ただ、同剤が対象とする軽度のアルツハイマー治療薬はアンメットニーズが高く、こうした状況も申請に大きく影響するため、承認の行方は不透明だ。追加試験の実施などが必要になる可能性もある。FDAは諮問委での専門家の意見を踏まえ、最終的に承認するか2021 年 3 月 7 日までに決定する。

◎分かれる2本の臨床第3相試験の結果


アデュカヌマブは、エーザイとバイオジェンが共同開発を進めており、米国ではバイオジェンが申請している。同剤をめぐっては、独立データモニタリングコミッティが無益性(Futility)解析により、主要評価項目が達成される可能性が低いと判断したことを踏まえ、2本の臨床第3相試験の中止を2019年3月に発表した。その後、新たな症例を加えた最終解析を行い、EMERGE試験では一転、主要評価項目を達成したと19年10月に再度発表した。主要評価項目に据えたClinical Dementia Rating-Sum of Boxes (CDR-SB)は高用量群(547例)でプラセボ群に比べ、23%有意に減少した(p=0.01)。これに対し、低用量群(543例)では14%だった。記憶や見当識、言語などの認知機能改善でベネフィットがみられた。

一方で、もう一本の臨床第3相試験である「ENGAGE試験(301試験)」では主要評価項目を達成していない。2つの臨床第3相試験でも結果がわかれる結果となったが、バイオジェンはこの日の諮問委に「研究間の違いは主に、高用量(10mg / kg)投与へのより低い曝露が原因」と説明した。臨床試験開始当初、アミロイド関連画像異常(ARIA-E;浮腫)への影響を抑える観点から低用量での試験が実施されていた。一方で治験などを通じてデータが集積されるなかで、「ARIAによる投与中止後、予定用量へ投与再開を可能にする」、「ApoE4陽性症例の最高投与量を10mg/kgに上げる」という2つのプロトコル変更を実施した。無益性解析の1748例から最終解析では3285例まで拡大していた。

◎諮問委 EMERGE試験を有効性の主要なエビデンスに「反対」が10票 賛成はなし 

この日の諮問委では、「103 試験の結果およびアルツハイマー病の病態生理に対する薬力学的効果に関するエビデンスとともに、301 試験および 302 試験の探索的解析による理解に基づき、302 試験をアデュカヌマブのアルツハイマー病に対する有効性に関する主要なエビデンスとみなすことができるか」については「賛成 0、反対 10、保留 1」と結論付けた。

「301試験を考慮せずに 302試験を独立して評価した場合、アルツハイマー病治療としての有効性に関する説得力のあるエビデンスを示しているか」についての投票では、「賛成1票、反対8票、保留2票」となるなど、厳しい意見が示された。このほか、「301試験を考慮せずに 302試験を独立して評価した場合、アルツハイマー病治療としての有効性に関する説得力のあるエビデンスを示しているか」について投票を行い、「賛成1、反対 8、保留 2 」となった。

臨床第1b相の「PRIME試験(103試験)」の長期継続投与試験のデータを踏まえ、「103(PRIME)試験がアデュカヌマブの有効性の裏付けとなるエビデンスを示しているか」については「賛成 0、反対 7、保留 4」だった。また、「申請者はアルツハイマー病の病態生理に対するアデュカヌマブの薬力学的効果に関して説得力のあるエビデンスを示しているか」については、「賛成 5、反対 0、保留 6」だった。

◎FDAは11月4日にポジティブな所感 エーザイ、バイオジェンの株価が一時上昇も


諮問委の結果はFDAの審査に大きな影響を与えるが、拘束力は持たず、過去に結果として承認された医薬品もある。FDAが4日に、「承認をサポートする有効性についてのエビデンスを提出した」との肯定的な所感を示したことから、市場では早期承認への期待感が広まり、米国市場でバイオジェン株が44%上昇し、国内でもエーザイの株価が年初以来の高値を付けるまで上昇していた。

バイオジェンのミシェル・ヴォナッソスCEOは諮問委での議論を踏まえ、「我々は引き続き、FDA が本申請の審査を完了できるよう協力していく」とのコメントを出している。

認知症患者は全世界で2050年に1億5200万人まで増加すると推計されている。進行を2年遅らせると、2050年までに世界の負担が22.5%減少する可能性があるとしている。一方で、欧米のメガファーマなど治験の失敗が相次ぎ、米国では20年近く新薬が登場しておらず、アンメットニーズがきわめて高い。
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