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財務省・一松主計官 診療報酬改定は「財源ありきでない」 薬価改定「奇数年も偶数年も同じ改定を」

公開日時 2020/12/24 04:52
財務省主計局の一松旬主計官は本誌取材に応じ、診療報酬改定について、「必要に応じて必要な額が措置される。財源ありきではない」との考えを述べた。この考えは、2021年度の「毎年薬価改定が実現したのでより顕著になった」と強調した。2021年度薬価改定は最終的に乖離率5%以上の品目を対象とすることで決着したが、議論の過程で浮上しがちな“数字ありき”の議論を牽制。「奇数年であっても偶数年であっても、毎年同じ改定をすべきという立場を今後も主張する」と述べた。

◎「無から有を生じることはできない」 薬価財源振り替えの発想を否定

「薬価部分の“マイナス改定”は過大要求の時点修正に過ぎない。歳出としていまだ実現していないものの、下方修正から何らかの財源が生み出されることはなく、無から有が生じると考えることはできない」―。一松主計官は、2014年度予算編成等に関する建議を引き合いに、診療報酬財源の考え方を説明する。

当時、総括主査の立場から建議にたずさわった一松主計官は、「私どもの考え方として一貫している」と強調。「診療報酬は必要なものに応じて必要な額が措置されるが、薬価で削った分は戻さなければならないという既得権益的な発想はない」と述べた。また、薬剤費が増加を続けるなかで、「そもそも総額としては抑制できていない。薬剤費が増えるなかで、財源がどこで生まれたという話も難しいと思っている」との見解を示し、存在しない“薬価財源”を診療報酬に振り替える考え方そのものを退けた。


◎診療報酬点数「必要に応じて必要な額が措置される」

2021年度は、毎年薬価改定の実現により、医療費を▲4315億円(国費ベースで▲1001億円程度)とした。12月17日の大臣折衝では同時に、新型コロナウイルス特例として診療報酬上の特例措置も決められた。感染予防などを講じる医療機関に対して初・再診料に5点(医科)などを上乗せする「一般診療等にかかわる診療報酬上の特例措置」(国費で218億円)や、「小児の外来診療等にかかわる診療報酬上の特例措置」(公費で190億円)だ。これらは消費増税財源などで賄っており、いずれについても、薬剤費削減分は財源ではないと説明した。

一松主計官は「令和2年度(2020年度)予算発表時の資料では、薬価改定による財政効果と診療報酬改定のプラスが少しは対応しているように見え、令和3年度(21年度)予算では全くそのような対応関係が見えないが、いずれかのやり方があるべき姿ということも、それがずっと続くというわけでもない。診療報酬改定は必要に応じて必要な額が措置されるということに過ぎない」と強調した。

今回の予算措置については、2020年度第2次補正予算、第3次補正予算案では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策が盛り込まれていることを踏まえたものであることも説明した。これまで公費で賄っていたが、「コスト増や収入減への対応は診療報酬で行うべき」として、「手段として軸足を移した」と説明した。また、中等症・重症の新型コロナ患者の受け入れ医療機関への診療報酬上の特例措置と異なり、いずれも期限が設けられており、「感染の拡大等に応じて柔軟に対応したいが、単純な延長には予備費を活用する必要があり、必要性を疎明するハードルがある」と話した。

一方で、21年度は、介護報酬や障害福祉サービス等報酬はプラス改定となったが、「骨太の方針に基づく歳出の目安を守らないといけないなかで、薬価調査の結果で毎年薬価改定の実現による財政効果の目途がある程度ついた段階で、処遇改善を図る必要から、判断されたもの」とも述べた。

◎「5%」という数字 固定的意味はない

毎年薬価改定の“初年度”に位置付ける2021年度薬価改定は、乖離率5%以上の品目、全品のうち約7割を対象とすることで決着した。一松主計官は、初年度であることに加え、2016年末に4大臣合意された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」で対象範囲を「価格乖離の大きな品目」とされたことや、中医協の議論などを踏まえて対象範囲の決着に至ったと説明した。

“5%”という数字での線引きが今後行われるとの観測もすでに飛び交っているが、「5%という数字は、これまでの経緯以上の固定的意味合いはなく、エビデンスベースというわけでもないと理解している」と説明。「我々としては、次回の2年後の改定は、薬価調査の結果を踏まえる必要はあるものの、通常と変わらない全品改定を主張していくことになるのではないか」と強調した。

2021年度改定の決定に際しては、加藤官房長官、麻生財務相、田村厚労相が「毎年薬価改定の実現について」に合意した。このなかでも、「毎年薬価改定の初年度」と明記されている。一松主計官は、2016年の4大臣合意には「その間の年」とされているが、それ以降、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)などでも、“中間年改定”という言葉を使っていないと説明。「奇数年と偶数年を差別化しない言い方をしている。我々としてはそこに大きな違いは持たない。すなわち、奇数年であっても偶数年であっても、毎年同じ改定をするという立場を今後も主張する」と強調した。

◎乖離率だけでなく乖離額も見るべき「結局は全品改定が望ましい」


改定範囲の決定に際しては、乖離率や乖離額、薬剤費の削減総額などをめぐり、中医協の場も含め、様々な議論が繰り広げられた。一松主計官は、財務省の考え方について、「はるかにシンプルに考えている。国民負担の観点から、高止まりは良くない。乖離率だけではなく、乖離額も見るべきだと思っているし、結局は全品改定が望ましいと思っている」と強調した。

また、「既収載品について薬価が下がっても薬剤費は伸び続けている。その理由として新薬の収載がある」と指摘した。薬価制度の透明性向上については一定の理解を示したうえで、「新薬は薬価が最初に決まる段階から、薬価改定までの段階を一連のものとして見る必要がある。当然、新薬創出等加算など革新的な新薬への配慮はあってしかるべきだが、最初の収載段階で評価がなされているのであれば、価格改定の時は逆にしっかり下げるという考え方があってもよい。そのバランスが重要だと思っている」と述べた。そのうえで、新薬創出等加算の在り方や長期収載品の引下げルールについて、今後主張する考えを滲ませた。

このほか、調整幅に加え、一定幅として薬価差の削減幅を0.8%分緩和したが、これについても、3大臣が合意した「毎年薬価改定の実現について」で、新型コロナの影響と“見なした”うえでの特例だと強調。財務省としては今後継続することを前提としていないとの考えも示した。(望月英梨)
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