武田薬品のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOは５月11日、決算会見に臨み、ポストコロナを見据えた働き方について、「武田としては、ハイブリッドの形で仕事をしていきたい。対面でのインタラクションについても重要だと考えている。フルのリモートモデルは最適ではない」と強調した。コロナ禍の情報提供活動については、「対面のやり取りに加えて、オムニチャネルのインタラクションを追加している」と述べた。また、４月１日付で、ジャパンファーマビジネス ユニット（JPBU）プレジデントに就任した古田未来乃氏は、国内市場について、希少疾患など５つの主要なビジネスエリアに集中する「戦略に変更はない」と強調。薬価など日本市場の厳しさを認めたうえで、「我々がポートフォリオを有している疾患領域に集中することで今後も伸ばしていくことができると考えている」と自信を見せた。

◎ポストコロナ見据え“ハイブリッドモデル”の働き方を検討　地域や職種に応じて

「デジタルとデータの力の活用を加速させる」。ウェバー社長は会見で、こう力を込めた。ＡＩ（人工知能）や機械学習などのデジタルの活用により、臨床研究分野でイノベーションを生み出す。ただ、デジタルの利活用はそれだけにとどまらない。「製造、コマーシャルオペレーション、バックオフィスのオペレーション、いずれの分野でも加速している」と話し、業務の生産性向上も進める考えを示した。

コロナ禍でのデジタルの利活用は、働き方改革も加速させている。ウェバー社長は、自らもリモートで仕事を進めていることを明かしながら、「パンデミック下ではリモートでも活動は可能であることを示してきた」と述べた。そのうえで、パンデミック終息後の新たな働き方として、リモートと対面をベストミックスした“ハイブリッドモデル”を検討する考えを示した。ウェバー社長は、「フルのリモートは我々あまり良いとは思っていない。ハイブリッドにする方が、フレキシビリティがあると思っている。対面的なつながりも失いたくない、大事だと思っている」と述べた。こうしたハイブリッドモデルはオフィス勤務の社員ではメリットが大きい一方で、生産部門や研究所勤務の社員では難しさをはらむなど、職種による差があるとの考えも示した。

社員個人や組織のケイパビリティの最大化を図ることができるよう、管理職に対して、対面とリモートを組み合わせるベストなバランスを見つけることを求めていることも明かし、「国や地域性でニーズも違う。私どもかなり柔軟に国ごと、地域ごとに行っている」と述べた。

◎オムニチャネル活用で「柔軟に顧客のニーズに合わせる」

ＭＲの情報提供活動についても、「従来の対面でのやり取りだけでなく、オムニチャネルによるインタラクションを追加している」と説明した。医師同士をつなぐなど、バーチャルなPeer to Peerの会議を行うなど、「オムニチャネルのインタラクションが発展してきている」と述べた。こうしたオムニチャネルのニーズも国・地域や、医師個人によっても異なることも指摘。「デジタルには非常に関心の高いドクターもいれば、いやいやそんなに好まない、将来的には対面に戻りたいという医師もいる。私どもは、柔軟に顧客のニーズに合わせてやっていく」と述べた。

◎2020年度業績 グローバル14製品が好調　21年は「大きな転換点」ウェバー社長

同社の売上高は、前年度比2.8%減の3兆1978億円、営業利益は407.2%増の5093億円だった。純利益は749.9％成長し、3760億円となった。為替影響を受けたほか、OTC子会社の武田コンシューマーヘルスケア（現・アリナミン製薬）を米大手投資ファンドに売却したことが影響した。これらの影響を除いた実質ベースでは、売上高は対前年度比2.2％増、コア営業利益は対前年度比13.0％増だった。エンタイビオが対前年同期比26.2％増の4293億円を売上げ、グローバルブランド14製品が対前年同期比14％増となるなど、伸長した。ウェバー社長は、「パンデミックの状況下だが、武田はマネジメントガイダンスを達成できたことを嬉しく思っている」と胸を張った。

シャイアー買収以降、“統合”に力を入れてきた同社だが、2021年度以降は、トップラインの加速とパイプラインの拡充にフォーカスを移す。40以上の候補物質があるパイプラインに自信を見せ、「2021年度が大きな転換点となる」と力を込めた。

◎古田JPBUプレジデント　アンメットニーズ高い領域の成長に自信　

国内医療用医薬品売上高は、対前年度比5.6％減の5597億円だった。４月１日付でJPBUのプレジデントに就任した古田氏は、「４月に着任してから、状況を把握しながら今後どのように進めていくか、考えている。ただ、はっきりしているのは、前任の岩崎プレジデント（現取締役・日本管掌）の時から進めていたポートフォリオをよりグローバルに、集中する疾患領域にシフトし、より先進的な、アンメットメディカルニーズの高い革新的な医薬品を提供する戦略には変化はない」と述べた。

毎年薬価改定の導入など、日本市場の厳しさも増す。古田プレジデントは、「薬価面等、厳しいところもあると思うが、非常にアンメットニーズの高い領域については、市場も伸びている。弊社のポートフォリオもきちっと成長を続けている。我々がポートフォリオを有している疾患領域に集中することで今後も伸ばしていくことができると考えている」と自信をみせた。

【20年度連結業績 （前年同期比）　21年度予想（前年同期比）】
売上高 ３兆1978億1200万円（2.8％減）　３兆3700億円（5.4％増）
営業利益 5092億6900万円（407.2％増）　4880億円（4.2％減）
親会社帰属純利益　3760億500万円（749.9％増）　2500億円（33.5％減）

【20年度のグローバル主要製品全世界売上高（前年同期実績）　21年度見込み　億円】
エンティビオ（国内製品名：エンタイビオ）　4293 (3472）5380
Dexilant　556　(628）540
Pantoloc/Controloc 431 (495）370
タケキャブ　848 (727）940
Gattex/Revestive　646（618）790
Pentasa 　231 (256）190
リアルダ/Mezavant　255 (234）190
Amitiza 212　(281）50
Resolor/Motegrity　112 (66)　120
Alofisel 8 (-)30
エラプレース　688 (679）710
リプレガル　518（513）560
ビプリブ　385（380）410
Natpara/Natpar　36（136）50
アドベイト　1285（1579）※アディノベイトと合算で1760
アディノベイト　581（586）
ファイバ　445（515） 350
Recombinate 134 (-) 120
Hemofil/Immunate ・Immunine　187（223）170
フィラジル　268 (327）150
Takhzyro　867 (683）　
Kalbitor　39 (45）20
Cinryze　219 (243）170
免疫グロブリン　3349 (2987）
アルブミン　576 (672）
ベルケイド　　1011 (1183）830
リュープリン　954 (1090）1040
ニンラーロ　　874 (776）970
アドセトリス　594（527）700
アイクルシグ　342（318）390
アルンブリグ　88（72）160
ベクティビックス　238（225）220
バイバンス　2715（2741）2930
トリンテリックス　689（707）820
Adderall　XR　178 (243）100
ロゼレム　120 (145）110
レミニール　72 (173）
インチュニブ　204 (146）170
アジルバ　822 (767）680
ネシーナ　577 (580）
Uloric　25 (169）
Colcrys　50 (225）
ロトリガ　318 (318）290
アイファガン　159（-） 120
ホスレノール　135（-） 110
Actovegin 　107 (-) 110

【20年度の国内主要製品売上高（億円）】
エンタイビオ　89　45.8％増
タケキャブ　833　15.5％増
エラブレース　16　0.4％減
ビプリブ　12　21.4％減
アドベイト　64　9.7％減
アディノベイト　150　1.5％増
ファイバ　9　45.5％減
フィラジル　14 59.8%増
リュープリン　351　13.9％減
ニンラーロ　50　4.4％増
アドセトリス　110　37.5％増
ベクティビックス　238　5.6％増
トリンテリックス　20　368.8％増
ロゼレム　117　7.0％増
レミニール　72　58.4％減
インチュニブ　107　72.4％増
アジルバ　822　7.1％増
ネシーナ　276　0.8％減
ロトリガ　318　0.0％