薬食審 5月26日に第一部会 新薬7製品を審議 大塚製薬やアムジェンの片頭痛薬など
公開日時 2021/05/13 04:48
厚生労働省は5月12日、新薬の承認可否の審議などを行う薬食審医薬品第一部会を26日にウェブ会議で開催すると発表した。審議品目は7製品で、全て新有効成分含有医薬品。大塚製薬やアムジェンがそれぞれ承認申請した片頭痛に対する抗体製剤や、初の経口投与の脊髄性筋萎縮症治療薬エブリスディドライシロップ(一般名:リスジプラム、中外製薬)、新規機序の2型糖尿病治療薬ツイミーグ錠(同イメグリミン塩酸塩、大日本住友製薬)が含まれる。
同部会で承認が了承された場合、6月に正式承認されるとみられる。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エブリスディドライシロップ60mg(リスジプラム、中外製薬):「脊髄性筋萎縮症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
中枢神経系及び全身のSMNタンパクレベルを増加させるように創製されたSMN2スプライシング修飾薬。運動神経及び筋肉機能をよりよくサポートするため、SMN2遺伝子から機能性のSMNタンパクの産生を増加するように設計されている。承認されれば、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する初の経口薬となる。
SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する。SMAは遺伝性の神経筋疾患で、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示す。乳幼児で最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患。乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人とされる。
▽ウパシタ静注透析用25μgシリンジ、同50μgシリンジ、同100μg、同150μgシリンジ、同200μg、同250μgシリンジ、同300μg(ウパシカルセトナトリウム水和物、三和化学研究所):「二次性副甲状腺機能亢進症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
透析経路から投与する注射薬で、副甲状腺のカルシウム感知受容体(CaSR)に作用して副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰な分泌を抑制する。透析患者は飲水量が厳しく制限されている中で、多くの薬を内服することが負担になっているとされる。注射薬とすることで、内服の負担をなくし、確実な投与も期待する。
二次性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎臓病の進行に伴って発症する合併症のひとつで、副甲状腺からPTHが過剰に分泌される病態。PTHが過剰に分泌されると骨からリンおよびカルシウムの血中への流出が促進され、結果、骨折や、心血管系への石灰化による動脈硬化などの発症リスクが高まり、生命予後に影響を及ぼすとされている。
▽レベスティブ皮下注用3.8mg(テデュグルチド(遺伝子組換え)、武田薬品):「短腸症候群」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
天然型ヒトGLP-2の新規遺伝子組換えアナログ。33個のアミノ酸からなるペプチドでGLP-2と同様の機序を介して作用し、腸管吸収機能の改善を促す。
短腸症候群(SBS)は極めてまれで重篤な慢性疾患。食事から十分な水分や栄養を吸収できず、生命を維持するために静脈栄養が必要な場合がある。外傷やクローン病、塞栓症のような血管合併症などによる小腸の大量切除や先天性の欠損をはじめとするさまざまな原疾患によってSBSに至り、病態も多岐にわたる。多くの患者で腸管機能が順応していくが、なかには生涯にわたり静脈栄養が必要となる患者もいる。また、SBS患者は栄養失調、脱水、下痢、疲労、脱力などの多くの症状を抱えながら生活している。
▽ツイミーグ錠500mg(イメグリミン塩酸塩、大日本住友製薬):「2型糖尿病」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
ミトコンドリアの機能を改善する新規機序の医薬品。2型糖尿病の主な成因であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両方の改善が期待されている。申請に用いた臨床試験では、単剤療法のほか、既存の経口血糖降下薬やインスリン製剤との併用療法のいずれにおいても有効性、安全性、忍容性が確認されたとしている。
ミトコンドリアの機能を改善するとの独自のメカニズムで、2型糖尿病治療において重要な役割を担うすい臓、筋肉、肝臓の3つの器官に作用する。グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促進するとともに、インスリン抵抗性を改善、糖新生を抑制することで血糖降下作用を示すと考えられている。
▽ギブラーリ皮下注189mg(ギボシランナトリウム、Alnylam(アルナイラム)Japan):「急性肝性ポルフィリン症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
アミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)を標的とするRNA干渉(RNAi)治療薬。ALAS1メッセンジャーRNA(mRNA)を特異的に低下させることで、急性肝性ポルフィリン症(AHP)の発作やその他の症状の発現に関連する毒性を減少させる。申請に用いた第3相試験では、ギボシランはプラセボと比較して、入院、緊急訪問診療、自宅における静脈内ヘミン投与を要するポルフィリン症の発作率を有意に低下させることが示されたとしている。
AHPは重症かつ原因不明の腹痛や、嘔吐、けいれんなどの消耗性の発作を特徴とする遺伝性の希少疾患。発作中に麻痺や呼吸停止の可能性もあることから生命を脅かす危険もある。AHPの多くの患者で、発作と発作の間も持続する疼痛などの慢性症状を伴い、日常機能とQOLに悪影響を及ぼす。
▽アジョビ皮下注225mgシリンジ(フレマネズマブ(遺伝子組換え)、大塚製薬):「片頭痛」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体。片頭痛の発現に重要な働きをしているとされるCGRPに結合してCGRP受容体との結合を阻害することで、片頭痛を予防すると考えられている。片頭痛に対する抗体製剤としては、4月に日本イーライリリーからエムガルティ皮下注((ガルカネズマブ(遺伝子組換え))が発売されている。
▽アイモビーグ皮下注70mgペン(エレヌマブ(遺伝子組換え)、アムジェン):「片頭痛」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。
抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体モノクローナル抗体。CGRP受容体を阻害することで片頭痛患者における片頭痛を予防できるように特異的にデザインされた完全ヒトモノクローナル抗体。アムジェンは成人片頭痛の予防的治療薬として承認申請した。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ゼオマイン筋注用50単位、同筋注用100単位、同筋注用200単位(一般名:インコボツリヌストキシンA、帝人ファーマ):「下肢痙縮」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
有効成分のインコボツリヌストキシンAは、A型ボツリヌス菌により産生されるA型ボツリヌス毒素から菌由来の複合タンパク質を取り除いたもの。これにより中和抗体ができにくくなる。現在は上上肢痙縮を効能・効果とし、今回、下肢痙縮の効能を追加する。
▽セルセプトカプセル250、同懸濁用散31.8%(ミコフェノール酸モフェチル、中外製薬)
▽ミコフェノール酸モフェチルカプセル250mg「ファイザー」(ミコフェノール酸モフェチル、マイラン製薬)
:いずれも「移植片対宿主病」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。