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厚労省・がん緩和ケア部会 「診断時からの緩和ケア」の課題を検討

公開日時 2021/09/09 04:49
厚生労働省は9月3日、「がんの緩和ケアに係る部会」を開催した。同部会は診断時、治療期、終末期、また各段階共通とがん治療のステージごとに緩和ケアの課題を整理し、がんと診断されたときからの緩和ケアの普及と充実、また提供される緩和ケアの実施体制と質の向上を図る狙いがある。第2回の会合となる今回は、「診断時の緩和ケアの議題」について議論が行われ、緩和ケアにかかわる相談窓口の充実、スタッフ教育や地域との連携などで多層的な支援体制を築いていく必要性が強調された。

◎「診断時」からの緩和ケア 診断までの悩みや負担を含む

主な議題として、▽「診断時からの緩和ケア」に求められる対応▽「がんへの適応」の一環として、告知や治療方針決定の場における対応が不十分ではないか▽検査の場、診断が決定するまでの間における疼痛緩和や不安の軽減に対する対応が不十分ではないか▽初診時からがん相談支援センターをさらに活用できるようにするべきではないか──などが取り上げられた。

「診断時からの緩和」に求められる対応については、島根県健康福祉部医療統括監の谷口栄作構成員が「診断時とはいつからなのか。確定診断時か、それとも診断に至るまでのプロセスを含めるとするとどこで線引きするのか。対象となる方を確認したい」と前提部分を問い質した。これに対して事務局は「診断した時ではなく、診断までの期間を含めて患者が不安に感じたときからのケアが必要」との見解を示し、高知大学医学部附属病院地域医療連携室副室長/がん相談支援センター副センター長の前田英武構成員は、「検査を重ねていくうちに離職を考える方も多いことから、疑い病名が付いた時点からが対象ではないかと考える」と線引きとなる目安を示した。ほとんどの構成員は診断(告知)の時からではなくその前から広く対象にしていくことに賛意を示している。

◎かかりつけ医の緩和ケア講習 診断時からの対応にズレ

続いての議題である告知や治療方針決定の場における対応に関しては、身体的/医学的、心理的、実務面などでがんへの適応をいかに図っていくかが重要であり、比較的早期から生じる心理社会的な苦痛に対しは、患者に対する教育的な支援が有用な手段とされている。「がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査報告書」(2013年)によると、がん体験者が悩みや負担をやわらげるために必要と思う情報や支援で最も多かったニーズは「体験談・同病者との交流」、次いで「診療に関する情報収集と情報提供方法」となっており、この結果を踏まえて厚労省はがん相談支援センターやピアサポート(がん患者等の支援を行うがん体験者)の役割がより重要になるとの考えを示している。

元NPO周南いのちを考える会代表の前川育構成員は、「現状ではピアサポートの質の担保が十分ではないことから、悩みや負担を軽減するための選択肢の1つといった表現にとどめるべきではないか」との言及。これに対して、NPO法人がんノート代表理事の岸田徹氏構成員は「ピア(仲間)の支援は大切だと思うので、全国で研修体制をしっかり構築していくことが必要」と指摘した。国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野長の小川朝生構成員は、「日本のピアサポートはまだ発展途上だが、心理社会的支援は地域コミュニティや、患者さんのセルフマネジメント能力を高めるサポートなどを組み合わせて多層的に用意することが大事。医療者と行政の目線が合って話し合いの場ができてくれば違った展開ができるのではないか」との考えを示した。

日本医師会常任理事の羽鳥裕構成員は、「告知後の相談先の1つとしてかかりつけ医も候補の1つだが、緩和ケアに関する講習が医療用麻薬の使い方などがメインで、患者さんに寄り添ってサポートするという内容になっていない。もう少し告知時にかかりつけ医も患者さんも読んで納得できる資料があればいい」と述べ、診断時からの緩和ケアを実施していくうえで現状の研修や講習にズレがあることを訴えた。

◎診断前の疼痛緩和にも 積極的な対応が必要

院内がん登録におけるがんの登録割合によると、約半数のがん患者が拠点病院以外で初回治療を開始しており、その前段にあたる検査や診断については、さらに拠点病院以外で行われていることが推察される。こうした現状のなか、検査の場、診断が決定するまでの間における疼痛緩和、不安の軽減に対する対応について前田構成員は、「非拠点病院における相談支援センターの活用が非常に重要。特に相談窓口のない病院の患者さんの支援をいかに行っていくかが今後の大きな取り組みの一つと考えている」との見方を示した。これまで拠点病院以外の病院やかかりつけ医にがん相談支援センターの活用が周知されていないなどの課題もあるという。

また聖マリアンナ医科大学緩和医療学教授の橋口かおり構成員は、診断が決定するまでの疼痛緩和に関して「診断後の鎮痛薬使用の教育はされてきたが、診断過程での症状緩和はあまいところがあり、薬の使用を控える傾向にある」と述べ、診断時からの緩和ケアの普及に合わせて、疼痛緩和に関する教育を変えていく必要性を指摘した。また、東京女子医科大学東医療センター薬剤部長の伊東俊雅構成員は、「診断前の患者さんは痛みがあってもなかなか言えないのが実情。やはり検査から診断までの間に気軽になんでも相談できる窓口があればいい」と補足した。

◎まずは自院スタッフで対応 相談支援センターは「最後の砦」

議論でより多くの時間が割かれたのががん相談支援センターや自院の相談窓口の位置づけだ。神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科特命教授の木澤義之構成員は、外来でのスクリーニングや主治医および看護師、緩和ケアチームのファーストコンタクトの重要性を指摘。「主治医が外来看護師をうまく使いながら患者さんの不安をサポートしていくことが大切だ。がん相談支援センターはプライマリではないので、まず自院の外来のスタッフでしっかり対応し、最後の砦として相談支援センターでの情報提供や支援を行うという仕組みにしていくべきだ」と強調した。

一方、がん相談支援センターは院外の患者さんの利用が少ないと言われている。また小川構成員は相談支援センターにおける地域としてのリソースと自院の患者への対応が混在しているとしたうえで、「その2つを少し切り分けて体制を整備していくことと、最初の対応はそれぞれの病院で行うとしても、その際に最低限、地域に相談支援センターがあるという情報は紙媒体などで提供し、センターの存在を周知していく必要があると思う」と述べた。

最後に東京大学大学院医学系研究科特任教授の中川恵一座長が小川構成員と作成した告知を行う面談における資材の例を紹介。「診断された時からあなたを支える仕組みがあります」「相談支援センターで『治療や生活に関連した相談や情報提供』をしています」などの文言が盛り込まれている。中川座長は「診断時からの緩和ケアに関するわかりやすい資料や、告知の場において患者さんやご家族に渡せる資材を用意する。これを確実に手渡すことによって医療者および患者さんに対して診断時からの緩和ケアを啓発していきたい」と締めくくった。


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