厚生労働省は11月14日、第16回目となる「医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。前回の会合でC-２水準について、その対象分野となる技能・技術の基準が不明確、あるいは適用範囲の拡大で「高度技能・技術」を習得する場が拡散されるのではないかなど一部構成員の懸念を受けてC-2水準の適用分野の考え方などをあらためて議論するために開かれたもの。最終的には厚労省が示した従来案を進めていく方針が承認されたが、C-2水準が時間外労働上限規制を免れる隠れ蓑にならないよう、適正・厳格な審査の運用により対象技能を決めていくなどが確認された。

◎基本19領域学会のヒアリングから「三次医療圏または広域」を除外

C-2水準は、指定された医療機関で一定期間集中的に高度特定技能の育成に関連する診療業務を行う場合に適用され、時間外労働規制の上限規制は1850時間に緩和される。その対象分野については「高度な技能を有する医師を育成することが公益上必要とされる分野」が想定され、具体的には当初、①「わが国の医療水準を維持発展していくために必要とされる、医学研究や医療技術の進歩により新たに登場した、保険未収載の治療・手術技術（先進医療を含む）」が想定されていた。

しかしその後、調査・研究事業や基本19領域の学会へのヒアリング調査で、②「基本領域の専門医取得段階では個々の医師が独立して実施できる等の高いレベルまで到達することが困難な技能」も含まれうることが明らかになったという。

そのため厚労省は、前回会合で指摘され、同検討会中間とりまとめなどで①に関連して盛り込まれた「高度に専門的な医療を三次医療圏単位またはより広域に提供することにより」との文言について、「限定すると、②がC-2水準の対象技能に含まれなくなることが考えられ、良質かつ適切な医療を提供しつづけるための医師の育成に支障を来す」として、この制限を適用せず、C-2水準の対象分野・技能の考え方は前回示した案にしてはどうかと提案。すなわち、対象分野には「日本専門医機構の定める基本領域（19領域）において、高度な技能を有する医師を育成することが公益上特に必要と認められる医療の分野」が該当し、対象技能になりうる技能の考え方として①と②の両方が該当するという方針を示した。

半面、C-2水準の技能等に関する審査の運用については、審査の適正性・透明性を担保する仕組みのための方針案を示し、当初より対象分野・技能が拡大していくことへの理解を求めた。

◎C-2水準の対象技能を審査する審査組織の責任がより重大に

前回会合で、「高度に専門的な医療を三次医療圏単位またはより広域に提供することにより」との文言について質した国際医療福祉大学大学院教授の島崎謙治構成員は、事務局の「その限定を適用しない」という経緯の説明に対して一定の理解を示した。しかしながら、「学会のヒアリングをもとに対象範囲が広がり、それに伴って審査組織の役割もかなり広がってしまった。したがって審査の判断基準の設定がより重要になるのではないか」と釘を刺した。

日本病院会副会長の岡留健一郎構成員も、「基本19領域の学会のヒアリング結果をみると、リストに挙がっている半数以上はＢ水準（地域医療確保暫定特例水準）でカバーできるのではないかと思う」とC-2水準とＢ水準との混同がみられると問題提起。そのうえで「審査組織にいかに厳格に審査してもらうか、その運用が非常に大事になる」と指摘した。

事務局では審査の適正性・透明性を担保する仕組み等の方針案として、医師が提出する技能研修計画において計画期間、経験を行う分野、習得予定の技能、経験予定症例数、手術数、指導者・医療機関の状況、研修、学会、論文発表等学術活動の予定等の記載を求めるほか、▽複数の異なる分野の学術団体から技術的助言を得たうえで審査を行う▽審査組織における審査の運用について、例えば本検討会等において、報告および確認し、必要に応じて運用の見直しを行う▽C-2水準の技能の考え方については、審査組織内に蓄積された技能研修計画の内容を用いて定期的に見直しを行う──などを挙げている。

最終的には学会等でもC-2水準の対象分野・技能の基準を明確に示すのは現状では困難であり、懸念は残るものの厚労省案は概ね了承された。「サブスペシャリティ領域の研修は当然C-2に該当すると思っている医師も多い」とある構成員は、C-2水準の考え方と現場の認識との乖離を指摘していたが、それらを埋めていくためにも審査組織が適切に機能するか、今後問われていくことになる。