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メディパルHD 新中期ビジョン 海外進出や予防・未病事業に注力 MSなどの社内リソースを再配分

公開日時 2022/11/02 04:51
メディパルホールディングスの渡辺秀一社長は11月1日、オンライン会見にのぞみ、2023年3月期~27年3月期の5カ年の新中期経営計画「2027メディパル中期ビジョン」を発表した。人口の高齢化を背景に医療費抑制策が今後も続くとした上で、「今までのような単純な医薬品卸売業では成長できない」と危機感を示し、「従来のビジネス以外の収益構造を早く作らないといけない」と強調した。新ビジョンでは海外進出、予防・未病領域の事業拡大、デジタル活用によるビジネス基盤の強化など5つの重点事業を伸ばして新たな収益源とするほか、基盤事業の医療用医薬品等卸売業はDX化を進めて生産性を高め、結果としてMSを含む社内リソースを重点事業に再配分する方針を示した。

同社グループのMS約2200人(管理職含めると約2600人)がこの5年で何人体制になるかは不明。ただ、新ビジョンの中で、医療用医薬品等卸売事業の生産性向上・MSの再配置により、経常利益で60億円の効率化を見込んでいる。

同社の長福恭弘副社長(メディセオ会長)は、「(医療用医薬品等卸売業の)営業の生産性を5年間で大きく上げていかないといけない」との認識を示した。そして、生産性の向上に伴い余剰となったMSについては、重点事業と位置付けるアグロ・フーズ領域(動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業)や国内最大のヘルスケア物流プラットフォームの構築を目指すメディスケット社を例に挙げながら、「成長戦略(=重点事業)の方に横断的にうつってもらい、活躍してもらいたいと考えている」と述べた。

◎いかなる環境変化に直面しても「人々の健康と社会の発展に貢献し続ける」


新ビジョンの基本方針は、「Change the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」とした。渡辺社長は、この基本方針について、「メディパルグループはいかなる環境変化に直面しても、主体的に物事を考え、常に自己変革し、人々の健康と社会の発展に貢献し続けるという強い意志を込めた」と説明した。医療用医薬品等卸売業については、「仕入原価の上昇や薬価の下落が利益を圧迫することをリスクとして想定している」とし、「重点事業を伸ばすことで、新たな利益を獲得していく」と基本的な考えを述べた。

◎5年間で成長投資1000億円、人材投資100億円 経常利益1000億円目指す

新ビジョンでは、重点事業に投じる「成長投資」として5年間で1000億円、「人材投資」として同100億円を投入する計画。重点事業の成長と、医療用医薬品等卸売業などの基盤事業の生産性向上を通じて、最終26年度に経常利益1000億円(21年度620億円)、ROE9%の実現を目指す。

重点事業(成長戦略)として、(1)海外への進出(2)予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大(3)デジタルを活用したビジネス基盤の強化(4)持続可能な流通の構築(5)地域医療における価値共創――の5つを掲げた。重点事業は、人材や財務を基盤とし、事業ポートフォリオのシフトとパートナーとの協働で展開する。これらの実行を通じて社会価値・顧客価値を創造し、収益につなげる。

◎スーパーオーファンの海外自販を計画 「グローバルビジネスにチャレンジ」

海外進出では、JCRファーマから導入した4つの超希少疾病用の新薬候補を、日本を除く全世界で開発・製造・販売する考え。メディパルHDの依田俊英専務取締役は、導入品はいずれも1品目あたりの患者数が100人以下のスーパーオーファンだとした上で、開発は米国中心でCROと進めると説明。販売は「自社販売の形を取りたい」とした。ただ、患者数が極めて少ないことからMRは組織せず、患者会とのコミュニケーションを密に取って新薬を提供する戦略を披露した。

渡辺社長は、「日本の医療全体をみると、この数年は、メディパルグループの業績ならしのげる。しかし、発展するためには、今から種をまかないと花は咲かない」と、初の製品導入・海外進出に手を広げた理由を語った。そして、「メディパルグループの有する高度な流通ノウハウを活かし、パートナーとの連携による新たなグローバルビジネスにチャレンジする」、「日本の流通を世界に出す」と海外進出への意気込みを語った。なお、“桃栗三年柿八年”とのことわざを引用しながら、「種をまいてもすぐに芽は出ない」とも述べ、製品導入・海外進出では投資が先行するため当面は収益を圧迫するとの認識も示した。

◎健康寿命の延伸、介護予防と関わり深い“口腔ケア”に参入


病気を未然に防ぐ予防・未病領域にも経営資源を投下し、最先端の検査機器・試薬など取扱い商品の拡大を進める。ここでも医薬品卸がこれまで本格参入していなかった歯科領域に関わる方針を示し、渡辺社長は「口腔ケアにも参入する」と表明した。歯科健診の義務化や、口腔ケアが健康寿命の延伸や介護予防と深く関係していること、また歯科領域の市場規模が6000~7000億円あることが主な参入理由となる。

デジタルを活用したビジネス基盤の強化では、人々の健康増進や医療の効率化を目指し、ヘルスケアのデジタルプラットフォームの構築と収益化を進める。既に多くの協業事例があり、例えばエムティアイグループと協業している母子手帳アプリ「母子モ」は、妊娠した人の約3分の1が利用するまで拡大した。このアプリにはコンテンツのひとつとして小児予防ワクチン接種サービスがあり、ワクチン情報を提供するだけでなく、自治体、保護者、医療機関の3者間で接種手続きの簡略化などを実現して、自治体や医療機関の働き方改革にも貢献。メディパルグループはワクチンの適時供給を行うスキームとなっている。子育てを側面支援しつつ、配送の効率化と収益が期待できる。

手術支援ロボットや、医療用三次元画像処理による医療支援サービスといった最先端医療での協業では、実用化された際はメディパルグループが流通を担うことになっており、最先端医療機器の提供と収益化を同時に実現する考え。

持続可能な流通の構築では、H.U.グループとの医療・ヘルスケア領域における物流合同会社「メディスケット」(本店所在地・埼玉県三郷市)を通じて、「医療と健康、美」を支える国内最大のヘルスケア物流プラットフォームの構築を加速させる(関連記事はこちら。また、製薬企業から患者までの医薬品の温度や振動などの品質情報を一元管理するトレーサビリティの完全化を目指すほか、DX化を進めてサプライチェーンの無駄をなくすことで、温室効果ガス排出削減や生産性向上、働き方改革を進める。

◎地域医療コーディネーターを設置 地域の課題抽出、解決策を提案

地域医療における価値共創では、地域のヘルスケア課題を解決することで新たな社会価値を創造し、基盤の医薬品等卸売事業の強化につなげる。具体的には、メディパルグループに「地域医療コーディネーター」を設置。地域の顧客(自治体、医療機関、医師会、薬剤師会など)がかかわるヘルスケアの課題を抽出し、解決策を提案する。

渡辺社長は「顧客とWin‐Winになる価値の共創に取り組む。病気を未然に防ぎ、早期発見・治療につなげ、人々の心身共に健康であり続けることに貢献したい」と語った。また、地域の顧客の課題解決を、製薬企業などの取引先も巻き込んで展開していく構えもみせた。

◎未来志向型人材の育成を積極的に推進

このほか、重点事業を遂行する人材戦略では、「未来志向型人材の育成」を積極的に推進する方針。渡辺社長は、「人材戦略と成長戦略(重点事業)の同期により成果を創出する」と強調し、▽経営理念を伝える(ビジョンを持って伝える)▽豊かな創造性(新たな価値創造)▽本質を見極める(自分への問い)▽周囲を巻き込む(チームワークとネットワーク)▽コミュニケーション(高い対話力)▽分析・課題抽出・解決(組織課題への取り組み)――の6つを持つメディパルグループの未来を担う人材を育成する考えを示した。
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