財務省 骨太視野に「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲の早急な見直し提案へ
公開日時 2023/05/09 04:52
財務省主計局は今夏にも政府が取りまとめる骨太方針に向けて、「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲の早急な見直しを提案する方針を固めた。我が国の医薬品費などのGDP比や1人当たり医薬品費等は「先進国の中で極めて高い」と指摘。高額薬剤の登場が見込まれるなかで、「保険給付がいまのままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない」として早急な対応の必要性を指摘した。
財務省は4月28日に開かれた経済財政諮問会議の経済・財政一体改革推進委員会「社会保障ワーキング・グループ」に、「改革工程表の中で早急に実現すべき重要課題」として、“薬剤自己負担の引上げ”をテーマの一つにあげた。
◎GDP比、1人当たり医薬品費ともに「先進国の中で極めて高い」と指摘
薬剤費については、既存薬価の改定率(薬剤費ベース)で年平均▲2.9%と例年マイナスとなっているものの、「薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により、薬剤費総額は拡大傾向にある」と指摘。実際の薬剤費総額(国民医療費ベース)の平均伸び率は+2.2%で、名目GDPの伸び(年平均伸び率+1.1%)を上回っているとした。さらに、後期高齢者では1人当たり薬剤料が高い傾向にあることから、今後の高齢化の進展に伴い、更なる薬剤費の増加も見込まれるとした。医薬品費等(対GDP比)、1人当たり医薬品費等、薬剤費(対GDP比)のいずれの国際比較でも、薬剤費が先進国のなかで極めて高いことも指摘した。
◎「医薬品の有用性が低いものは自己負担増やす」or「薬剤費の一定額まで自己負担」
そのうえで財務省主計局は、単価が高額な、いわゆる高額薬剤の登場が増え、保険医療財政への影響も懸念されるなかで、「保険給付がいまのままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない。基本的には、公的医療保険の役割は大きなリスクをシェアするということであり、それを前提に考えるべき」と主張。薬剤の種類に応じた患者負担割合の設定をするフランスや、薬剤費の一定額までの全額患者負担とするスウェーデンの例を示したうえで、「諸外国の動向をみると、高額な医薬品について費用対効果を見て保険対象とするか判断する、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とする方向性が考えられ、早急な対応が必要」とした。
◎厚労省 BS目標「29年度末までに数量ベース80%以上置き換わった成分数が全体の60%以上」
一方、厚労省は経済・財政一体改革推進委員会社会保障ワーキング・グループにバイオシミラーの新たな目標として、「2029年度末までに、バイオシミラーに80%以上(数量ベース)置き換わった成分数が全体の成分数の60%以上(成分ベース)」とすることを報告した。