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武田薬品NSBU・宮柱部長 医師の働き方改革で情報活動は「選別の時代」に MRの専門性など強化

公開日時 2023/08/04 04:53
武田薬品の神経精神疾患事業部(以下、NSBU)は、2024年度から順次施行される医師の働き方改革を見据えて、MRの専門性の強化や、情報活動を的確にサポートするAIのブラッシュアップに取り組んでいる。同社の分析では、医師は24年度以降、これまで以上に限られた時間の中で臨床や医薬情報の収集を行うことになり、MRの選別が進むとみている。このような市場環境の中でもタケダMRが医師から会う価値の高いMRと位置付けられるために、MRに“圧倒的な専門性”を持たせることに加え、MR活動をAIが的確にサポートする環境を整備する必要があると判断した。

「医師はこれまで以上に会うべきMRを選ぶとみており、当社MRがそのような存在になれることを願っている。実は昨年からMRの専門性を強化している」――。NSBUの宮柱明日香部長(写真)は本誌取材に、医師の働き方改革による情報提供活動への影響をこう語った。MRは「選別の時代」に入ると予想し、MRに圧倒的な専門性を持たせて医療関係者に対する的確なレスポンスを研ぎ澄ますことが、選ばれるMRの要素のひとつになると指摘した。

また、「開業医、病院勤務医、育児中の先生など、医師によって製薬企業から情報収集する時間帯も異なるとみている」とし、「求められる情報を、最適なチャネルで、最適な時間帯に提供する見極めも必要になる。デジタル活動の強化、オムニチャネル型の活動をより推進する必要がある」とも強調した。

◎NSBUの全MRでAI活用を強化

同社は現在、MR、オンライン専任MR(社内では「リモートプロモーター」と呼称)、電子メール、電話、自社サイト、外部ソース、特約店などからのデータを集積・分析してマイクロセグメンテーションを行い、戦略や訪問・面談計画に落とし込んでいる。さらに、これらのデータのほか、医師が学会で発表した内容や病院ホームページのアップデート情報なども加え、担当する医療機関や医師の変化をAIが捉え、MRにアラートを発してくれる「AIリコメンデーション」を22年度から本格稼働させている。

例えば、うつ病の場合、まずは症状改善なのか、あるいは患者の社会復帰にフォーカスするのかといった患者個々の状態に合わせたマネジメントが実臨床で行われている。これに対し同社では、各種データをもとに医師がどのような情報を求めているのかを測定し、顧客ニーズや反応に合わせて提供する情報内容を変える取り組みを進めている。また、新規に納入があった時も、AIがMRにアラートを発し、MRはいち早く医療機関を訪問して情報提供や安全性のフォローアップなどを行っている。

宮柱部長は、「我々の使命のひとつに、患者さんを診ている全国の医師に適切なタイミングで、適切な情報を届けるということがある」とし、「『AIリコメンド』は、顧客理解を効率化し、MR活動の効果を高めるという点で、かなり有益なツールだと思う」との認識を示した。

ただ、現段階ではAIも完璧ではなく、AIリコメンドに基づいて医師を訪問して情報提供してもイマイチ刺さらないこともあるという。このような医師の反応などはシステムにフィードバックすることを徹底していると言い、「NSBUの全MRでAI活用の強化をしている段階にある。『皆さんがシステムにフィードバックすればするほど、的確な本当の右腕になってくれる』と部内で話している」と全MRでAIをブラッシュアップしていると語った。

◎23年度に「リモートプロモーター」倍増

製薬企業の中には、医師の働き方改革を見据えて、医師の都合に合わせてフレキシブルにオンラインなどで情報提供するリモート専任MRを増員し、組織を拡充する動きもある。宮柱部長は、「これまでのパイロットスタディの結果に基づき、リモートプロモーター(=リモート専任MR)を23年度に倍増させた」と明らかにしてくれた。リモートプロモーターの人数は開示していない。

リモートプロモーターは20年12月に発売した抗けいれん剤・ブコラムで活動を開始。現在は抗パーキンソン病薬・アジレクト、抗うつ薬・トリンテリックス、ADHD治療薬のインチュニブ及びビバンセといったNSBUのコアプロダクトもカバーしている。ただし、全ての情報活動をリモートプロモーターのみで展開することはせず、医師が求める情報収集方法に武田薬品が合わせていく方針だ。

宮柱部長は、「当社としてはオムニチャネル戦略の中でリモートプロモーターのバリューを評価し、顧客の嗜好性に合わせて、リモートプロモーターを含むベストミックスの体制を構築していきたい」とし、「我々は今後もデータやデジタルで変革を起こすことを推進するが、顧客のニーズや視点と、その先にいる患者さんの視点は絶対にぶらさない活動を展開していく。NSBUの社員にもこの点を強く言い続けていく」と強調した。

武田薬品NSBUの宮柱部長へのインタビュー記事の全文はミクス7月号に掲載しています(ミクスOnlineでは有料会員のみ閲覧できます。無料トライアルはこちら)。

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