医師の働き方改革施行後も、薬剤・疾患関連情報の収集時間は「変わらない」と回答する医師は７割―。製薬デジタルマーケティング支援会社のMCI DIGITALが医師5129人を対象に実施した調査結果から示された。薬剤・疾患関連情報の収集時間は「増えると思う」との回答も12％あった。情報収集時間が増えるチャネルとして、ネット講演会やネットサイトがあがる一方で、ＭＲを通じた収集時間は「減る」と予想する声が「増える」を10ポイント以上、上回った。働き方改革施行後は、医師の情報収集チャネルにより注視する必要がありそうだ。

文末の「関連ファイル」に、医師の働き方改革後の「薬剤・疾患関連情報の収集時間」と、チャネル別の収集時間に関する調査結果の資料を掲載しました（会員のみダウンロードできます。14日間の無料トライアルはこちら）。

◎ネット講演会による情報収集時間　医師の34.5％が「増えると思う」

調査では、医師に「時間外労働時間の上限設定が適用されることで、先生の薬剤・疾患関連情報の収集時間は今後どのように変化すると思うか」と尋ねたところ、収集時間が「増えると思う」が12.1％、「変わらないと思う」が70.7％、「減ると思う」が7.3％、「わからない」が9.9％だった。

チャネル別の情報収集時間は、▽ＭＲ（面談）、▽ＭＲ（オンライン面談）、▽ＭＲ（メール）、▽インターネットサイト、▽インターネット講演会、▽リアル講演会、▽製薬企業主催の勉強会・説明会、▽学会―の各チャネルとも情報収集時間が「変わらないと思う」が６～７割を占めた。ただ、「増えると思う」との回答割合が高いチャネルと、「減ると思う」との回答割合が高い傾向を示すチャネルもあった。

「増えると思う」との回答割合が「減ると思う」を10ポイント以上上回ったのは、「ネット講演会」と「ネットサイト」の２チャネルだった。「ネット講演会」による情報収集時間が「増えると思う」は34.5％、「減ると思う」は5.1％で差し引き29.4ポイント。「ネットサイト」では同27.9％、5.8％で、差し引き22.1ポイントとなった。

労働時間外の時間帯はオンラインコンテンツの視聴が減るとみる向きもあるが、今回の調査結果からは、オンラインコンテンツによる情報収集はより積極的に行われる可能性が高いといえそうだ。

◎ＭＲ面談による情報収集時間　「増えると思う」11.5％　「減ると思う」26.3％と二極化

一方で、情報収集時間が「減ると思う」が「増えると思う」を10ポイント以上上回ったのは「ＭＲ（面談）」と「ＭＲ（オンライン面談）」の２チャネルだった。「ＭＲ（面談）」による情報収集時間が「減ると思う」は26.3％、「増えると思う」は11.5％で差し引き14.8ポイント。「ＭＲ（オンライン面談）」では同23.4％、13.3％で差し引き10.2ポイントとなった。

調査結果からは、「減ると思う」と「増えると思う」と回答した医師がそれぞれ一定数存在しており、MCI DIGITALは、「薬剤・疾患関連情報の収集が、医師によって二極化する可能性がある」と分析している。製薬企業にとっては、医師のニーズや、情報収集の手段をこれまで以上に把握することも求められることになりそうだ。

なお、チャネル別の情報収集時間の分析対象医師は、時間外労働規制に備えて勤務先で労働時間短縮計画が「策定され推進中」又は「計画策定中」と答えた医師2467人だった。医師の働き方改革は2024年４月に施行され、勤務医の場合は原則、年間960時間とする上限規制が設けられる。

調査は、製薬企業のオウンドサイト（自社サイト）やその他医療関係企業サイトを閲覧している医師5129人（病院勤務医：3897人、開業医：1232人）を対象に実施した。調査時期は23年４月17日～28日。分析結果は、MCI DIGITALの「医師版マルチメディア白書2023年夏号」に掲載されている。