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流改懇 一社流通で製薬企業の「説明責任」 流通改善GL明記求める声相次ぐも業界側は慎重な検討を要望

公開日時 2023/09/29 06:25
厚生労働省は9月28日に開かれた「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)」に、流通改善ガイドラインの改訂の論点として、いわゆる“一社流通”をあげた。卸側が「説明責任は製薬企業にある」と述べたことに端を発し、購入側から製薬企業に対する説明責任を求める声が相次ぎ、「流通改善ガイドラインに明記すべき」との声があがった。これに対し、森英寿構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は、指摘は受け止めたものの、「ガイドラインに盛り込むということについては、慎重に考えていただきたい」と述べた。“説明責任”をめぐっては、「卸の方から1社流通を申し出ることはない」とする卸側に対し、製薬企業側が「提案をしている卸がいるために一社流通になっている」と「説明責任」をめぐり、応酬する場面もみられた。

◎一社流通実施は95社中64社、235品目 購入者側からは「安定供給」の観点からの議論求める声

厚労省はこの日の流改懇に一社流通をめぐるアンケート調査を報告した。その結果、1品目でも一社流通を行っていると回答した企業は回答のあった95社中、64社235品目に上った。希少疾病用医薬品(134品目)や再生医療等製品(8品目)では、症例数や納入施設が限られているなどの理由があげられた。また、生物由来製品(34品目)では、供給量が限られているため供給管理をしっかり行うという理由から一社流通が行われていた。ただ、生活習慣病治療薬や後発品のほか、販売移管で一社流通に変更されるケースもあるとの指摘が購入者側からはあがっていてる。

森昌平構成員(日本薬剤師会副会長)は、「まずは何のため、それから誰のための一社流通かということをちゃんと考えていかないといけない。生命関連商品としての医薬品の特性として、これは一つ考えていくべき」と問題提起した。実際に、1社流通になったために医薬品の供給が遅れるなど、医療現場に問題が起きているとして、「仮に1社流通にするのであれば、どういうことを担保して現場が困らずに、国民がアクセスできるかと考えないといけない」と述べ、安定供給の観点からの議論を求めた。

◎厚労省の窓口対応求める製薬業界に卸が反発「一社流通を決めているのは製薬企業」

森英寿構成員(製薬協流通適正化委員会委員長)は、製薬協内でアンケートを実施したものの、対象患者数や施設数が少なく一社流通を実施している以外のケースを「正直、確認することができなかった」として、「逆にこれについては、皆様方に教えていただきたい」と述べた。そのうえで、厚労省に定期的な状況把握を求めたほか、厚労省が設ける流通改善の相談窓口に触れ、「受身ではなく能動的に、医薬品流通の課題と問題点を収集いただくような仕組みが必要になってきている」として厚労省側の対応に課題認識を示した。

これに、卸側が反発。眞鍋雅信構成員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、「今の森委員のお話では、一社流通に関しても、当局の方に窓口があるのだから、何か不具合があればそこに申し立てればいいではないかというふうに聞こえた。一社流通を決めているのは我々流通側ではなくて、製薬企業側だ」と反発。「我々卸や医療機関、薬局に、丁寧に事前に説明をすべきだ。説明責任は製薬企業にある。ただし、我々としても流通の担い手として、一社流通になった理由について、医療機関や薬局の皆様にお伝えすることをお手伝いすることはやぶさかではない」と述べた。また、説明の際には、「書面」で示すことも流通改善ガイドラインに盛り込むべきとした。

◎製薬企業側の説明責任求める声相次ぐ  

購入側からは、一社流通を行う製薬企業側の説明責任を問う声が相次いだ。小山信彌構成員(日本私立医科大学協会参与)は、「一社流通があることは十分わかっているが、なぜそうしなければならないかということを十分に説明するよう、ガイドラインの改訂の中に入れていただきたい」と述べた。

原靖明構成員(日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長)は、“1社流通だから価格が出せない”という卸に対し、「一社流通になる理由がある特別な薬だから一社流通になっていて、価格が出ないんだという言い方を卸さんにしてほしいと思っていたが、メーカーさんから十分な説明がなければ、それはないんだろうなと思うのでそこはぜひお願いしたい。それをちゃんとしていけば、“一社流通ではないよね”という医薬品もあぶりだされるのではないか」との考えを示した。

◎眞鍋構成員「卸から申し出ることはない」 武岡構成員「提案している卸がいる」

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「一社流通に対して、誰が一社流通にすると言ったのかということの説明責任を持ってほしい。説明責任はメーカーも卸もしっかりしていただきたい」と述べた。

眞鍋構成員(卸連理事)は、「卸の方から1社流通を申し出ることはない」と強調。これに対し、武岡紀子構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会常任運営委員)は、「選定をしたメーカー側にも説明もしていく努力をしていくことはあるが、一方で提案をしている卸様がいるということで一社流通になっているということもあるので、一社流通されている医薬品卸さん同じくご説明にご協力をいただきたい」と応酬する場面もあった。

◎製薬協・森構成員「なかなかお約束できないというところも正直ある」

改訂流通改善ガイドラインへ、企業側の「説明責任」を明記する声が相次いだ格好だが、森英寿構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は、「ガイドラインに盛り込むということについては、慎重に考えていただきたい。説明責任という話についてはある程度、皆さんの意見をお聞きするが、ガイドラインを定めて、“皆でガイドラインを守っていこうよ”という前提で話をできないことは、なかなかお約束できないというところも正直ある」と述べ、慎重な検討を求めた。

これに対し、三村優美子座長(青山学院大名誉教授)は意見を受け止めたうえで、「企業の姿勢としてきちんとした説明をしていただきたいという要望があったということは、きちんと持ち帰ってお伝えいただきたい」と釘を刺した。


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