卸連・宮田会長 不採算品再算定「卸は全ての品目わからない」 新カテゴリーで流通当事者が共通理解を
公開日時 2023/12/01 04:51
日本医薬品卸売業連合会(卸連)の宮田浩美会長(スズケン代表取締役会長)は11月30日、理事会後の会見で、2024年度薬価改定に向けて焦点となっている不採算品再算定品目について、「卸が全部わかっているかと言えば、そうではない部分もある。こういうことを含めてきちっと流通改善を進めていきたい」と述べた。不採算品再算定は23年度薬価改定で臨時・特例的に1100品目が引上げを受けており、中医協では乖離率を踏まえて企業の流通改善への取り組みも検証し、24年度薬価改定の議論を行うとされている。
◎中医協で「総価取引の調整弁」との指摘も
製薬業界が不採算品再算定をはじめ、薬価上の下支え措置を求める中で、中医協の場では診療・支払各側から流通上の課題を指摘する声があがっている。11月24日に開かれた中医協薬価専門部会では、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、不採算品再算定や最低薬価品目では、「医療上の必要性を鑑みず、総価取引における“調整弁”として値引きされているような現状を改善し、医薬品の個々の価値に見合った取引が行われるようにすることが検討の前提として必要だ」との指摘もあがっていた。
宮田会長は、薬価上の下支えがなされている品目が総価取引の調整弁になっているとの指摘について、「ご指摘があった点については、事実としてそういうことが数字として出ているのでそこは改善していくべきだ」と表明。海外では不採算となった製品の販売が中止になっているとして、「必要な人に必要な薬が届かなくなってしまっては困る。国民皆保険を持続可能な形にするためにも流通当事者間で共有し、理解したうえで、流通改善に取り組む」必要性を強調した。
◎流通改善GL改訂で新カテゴリー設置「改定の実効性を高めるためにも一つのポイント」
そのために、医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会で改訂に向けて検討が進められている「流通改善ガイドラインの実効性をいかに高めていくか」が重要と強調した。ガイドラインでは、総価取引の是正に向けて、基礎的医薬品、安定確保医薬品A、不採算品再算定品を「医療上の必要性の高い品目」を新たなカテゴリーとして、従来の取引とは「別枠」として優先的に単品単価を推進する方針で検討が進められている。
宮田会長は「本来はすべての品目で単品単価交渉となるべきだが、まだ道半ばだ。今回の(24年度)改定の実効性を高めるためにも一つのポイントとして、カテゴリー分類を作り流通当事者に周知する」必要性を強調。乖離率の大きさなども指摘される不採算品再算定については、「卸が全部わかっているかと言えば、そうではない部分もある」として、医薬品卸も該当品目だとわからずに交渉しているケースもあると説明。中医協での議論を踏まえ、「そういうもの(不採算品再算定)が流通当事者間で周知されていないといけない」と強調した。
不採算品再算定は薬価改定後に価格が引き上がり、流通が混乱する懸念もあることなどから、品目リストは公表されていない。製造販売元の製薬企業には不採算品再算定の適用が伝えられるが、そのほかの流通当事者が不採算品再算定品目であることがわからないまま、取引が行われている。流通の適正化を求められる中で、購入側の薬局・医療機関側からもこれまでに、不採算品再算定の品目がわからないとの声があがっている。