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中医協総会 次期改定で診療側「従来以上の大幅なプラス改定を」 支払側は「引上げを行う環境にない」

公開日時 2023/12/11 06:01
中医協総会は12月8日、2024年度診療報酬改定に関する基本的な見解を診療・支払各側から聴取した。診療側(2号側)は、「医療の質を高めつつ、賃上げの好循環を全国の医療従事者に行き渡らせるためには適切な財源が必要」と主張。「診療報酬改定では従来以上の大幅なプラス改定が求められている」と強調した。これに対し支払側(1号側)は、「患者の負担増や保険料の上昇に直結する安易な診療報酬の引き上げを行う環境にはない」と指摘し、双方の見解は平行線をたどった。中医協は今週にも公益委員が各側の見解を踏まえて厚労大臣に提出する意見書の素案を提示する。一方、次期改定の焦点となっている医療関連職種の処遇改善は、同日の総会での議論を踏まえ、「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で検討を行うことを了承した。

24年度診療報酬改定の改定率をめぐる議論が佳境を迎えている。自民党派閥の政治資金パーティをめぐる問題が急浮上したことで、会期末を迎えた臨時国会の審議が流動的な状況となってきた。これに伴い今後の国会審議の情勢如何で24年度予算編成作業への影響を懸念する声も出始めている。岸田政権の根幹を揺るがす問題だけに、次期診療報酬改定をめぐる作業への影響も懸念されるところだ。岸田首相の動向に注目が集まっている。

◎診療側「コロナ特例による一時的な収入増は流行時にしっかり対応してきた“証”」

次期改定の焦点となる「改定率」をめぐる議論は、国会情勢を横目に見ながらも、中医協総会における各側の次期改定に対する見解が示されるなど、今週中に大詰めを迎える。8日の中医協総会で診療側は、「大幅なプラス改定」を求めた。財務省の財政制度等審議会は診療所の経営が「極めて良好」として、診療所の報酬単価を「5.5%程度引き下げるべき」と主張していた。これに強く反発する主張を診療側は盛り込み、物価高騰や賃上げに対応するためのプラス改定を求めた格好だ。

診療側が示した見解では、「(コロナ禍の)3年間、多くの医療機関等では、不眠不休で未知のウイルスに立ち向かい、時間外に発熱外来やワクチン接種、自宅・宿泊療養者の健康観察などを担ってきた。その際の補助金や診療報酬上の特例による一時的な収入増は、コロナ流行時にしっかり対応してきた証でもある」と反論。「コロナ禍という特殊な状況で生まれたストックは、賃上げの原資となるものではなく、賃上げは、フローで行うべきである」と強調した。

物価高騰に伴う医療関係職種の処遇改善については、「他産業の賃上げが進む中、医療従事者の賃金を引き上げ、サービスを提供するための人材を確保していくための原資を確実に担保することは、医療従事者が他産業へ流出し、人材確保が厳しくなっている現状も踏まえれば急務と言える」と主張。さらに、食材料費、光熱費等の物価高騰は医療機関にも大きな影響を及ぼしていると訴え、次期診療報酬改定での対応を強く求めた。

このほか「診療報酬と薬価は不可分一体の関係にある」として薬価改定財源等もあわせ、異例の診療報酬改定を乗り切る必要性を強調した。 

◎支払側 一般診療所を中心に医療機関・薬局の経営は堅調と分析

一方、支払側は、医療経済実態調査の結果について、「一般診療所の場合は費用の増加を収益の増加が上回ったために黒字が拡大し、医療法人では、新型コロナウイルス関連の補助金を含めた損益差額が 9.7%の黒字となった」と主張。「歯科診療所と保険薬局は、引き続き黒字基調で安定的に推移した」と述べ、一般診療所を中心に医療機関・薬局の経営は堅調と言えると分析した。さらに、「長期にわたり、賃金・物価の伸びを医療費の伸びが上回る構造が続いてきたことで、国民・事業主の保険料負担と患者自己負担は着実に増加し、医療保険財政は限界に近い状況にある」と指摘し、「限界にある国民負担の状況、診療所と病院の経営状況の違い、職種別の給与水準の格差などを総合的に勘案する必要がある。したがって、患者の負担増や保険料の上昇に直結する安易な診療報酬の引き上げを行う環境にはない」と強調した。

このほか「看護職員等の医療従事者の処遇改善は重要事項である」としながらも、「まずは診療報酬と補助金・交付金との役割分担の整理・効果検証を行い、その結果を踏まえた大胆な配分の見直しにより実現を図るなど、真に有効でメリハリの効いた診療報酬改定が不可欠」と主張した。

さらに「薬価・材料価格改定については、革新的新薬等のイノベーションへの十分な配慮、後発医薬品等の安定供給の確保を着実に進めるとともに、市場実勢価格の低下に伴う引下げ分を国民に還元すべきである」との見解を示した。

◎処遇改善めぐる対応 「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で検討 年明けの総会に諮る

この日の総会では、焦点となっている医療関連職種の処遇改善について課題と論点が事務局から示された。医療関係職種の賃上げが全産業平均に追いついていない状況を踏まえ、医療機関等の職員における処遇改善について、診療報酬において対応する場合を想定し、技術的検討を進めていくというもの。事務局案では、「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で必要な分析を行い、検討を進めることが提案された。これに診療側・支払側とも賛同し、分科会での議論を行う方針を了承した。これを受け厚労省保険局医療課は、「複数回の検討を年末年始を挟んで行い、年明けのしかるべきタイミングで中医協総会に諮らせていただきたい」と応じた。
 
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