中医協 薬価制度改革骨子案を了承 不採算品再算定は乖離率7%超除外 見直し後の検証求める声相次ぐ
公開日時 2023/12/21 04:52
中医協総会は12月20日、2024年度薬価制度改革の骨子案を了承した。焦点となっていた不採算品再算定については、企業から希望のあった品目を対象に特例的に適用する。一方で、乖離率が「7.0%」超となった品目は対象から除外する。対象品目は約2000品目。医薬品の価値に見合った“適正流通”が重視される中で、次回の薬価調査で流通状況を検証することも盛り込まれた。この日も、新薬創出等加算の企業指標の撤廃など効果の検証を求める声が中医協委員からあがった。厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「当然業界もきっと前向きに協力していただけると認識している」として、製薬業界と連携し、検証を行う姿勢を強調した。
◎不採算品再算定の適用は2000品目 「次回薬価調査で乖離状況確認、流通状況を検証へ」
厚労省は不採算品再算定について、「急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、企業から希望のあった品目を対象に特例的に適用する」ことを提案。全ての類似品が不採算に該当しないと適用されないルールがあるが、23年度改定に続き、このルールを適用しない特例的な対応を行い、幅広い品目を対象とする。一方で、「2023年度薬価調査結果において、前回の22年度薬価調査における全品目の平均乖離率である7.0%を超えた乖離率であった品目は対象外とする」ことも盛り込んだ。適用されるのは、約2000品目。
ただし、「次回の薬価調査における乖離状況を確認し、流通状況を検証する」ことや、2年連続で特例対応を行うことから、「不採算品再算定の適用のあり方について今後検討することとする」ことも盛り込んだ。
23年度薬価調査の平均乖離率6.0%を指標としなかった理由について、安川薬剤管理官は、「対象外とする範囲は、例えば今回の平均乖離率(6%)を超えた品目とすると、薬価調査時点では数値そのものが予測できない。(平均乖離率)6%付近というと平均値あたりなので品目も多く、なかなか線引きが難しい」と説明。「適正な流通をしていただくことを考えるのであれば、せめて前回の薬価調査の平均乖離率以上の品目であれば、不採算の品目として価格を引き上げるということでもいいのではないか」と理解を求めた。
◎支払側・鳥潟委員 仕切価率低下に懸念「流通状況検証の徹底を」
総会に先立って開催された薬価専門部会で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「不採算品再算定の品目については、物価高騰などあるにもかかわらず、安く流通させていた企業側の責任もあることから、乖離率が大きい品目は対象外にすべき」と指摘した。
支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、23年度改定で臨時・特例的対応がなされた際に、製薬企業が仕切価率を低下させた製品も一部あったことに触れ、「次回の薬価調査において乖離状況を確認し、流通状況を検証することの徹底をお願いしたい」と釘を刺した。
◎新薬創出等加算、後発品企業要件試行導入 早期の「検証」求める声相次ぐ
新薬をめぐっては新薬創出等加算において企業指標の撤廃や、迅速導入加算の新設などイノベーションを評価する項目が並んだ。後発品については、安定供給が確保できる企業を可視化する企業指標が試行的に導入される。診療・支払各側からは見直し後の“検証”を求める声があがった。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、関係業界がドラッグ・ラグ/ロスの解消や安定供給を後押しするとしたことに触れ、「非常に重要な意思表明があったと受け止めている」と表明。「企業としてしっかりと取り組み、今回の薬価上の対応によって、企業活動にどのような影響があったのかなど業界として示していくべき。今回の対応が、ドラッグ・ラグ/ロスの解消、医薬品の安定供給にどう結びついたのか、業界の協力のもとで検証していく必要がある」と述べた。また、業界全体として「安定供給確保に向けたビジョン」を早期に示すことも改めて求めた。
◎支払側・松本委員 新薬創出等加算「薬価維持と累積額控除のタイミングセットで議論が前提」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、これまでに外国平均価格調整による収載後の薬価引上げについて患者の理解を得るよう企業に努力を求めたほか、「薬価収載後の引き上げルールや新薬創出等加算の見直しが企業の開発戦略を含めてどのように影響したのか早急に検証していただき、中医協に報告することもお願いしている」と説明。「各企業、業界団体には、しっかり対応していただきたいと改めてお願いする」と述べた。
特に、新薬創出等加算については、「特許期間中の薬価の維持と累積額控除のタイミングをセットで議論することが前提ということをこの場で確認していただきたい」と述べた。また、25年度薬価制度改革に向けて、「新薬創出等加算の控除時期をはじめ医療保険財政の持続可能性を強くし意識した議論を早期に開始できるよう事務局に改めて準備をお願いしたい」と述べた。
◎安川薬剤管理官 検証へ「当然業界もきっと前向きに協力していただけると認識」
安川薬剤管理官は、「新薬の観点も安定供給の観点も、それぞれ検証が必要というようなことは従来から繰り返し述べておりますし、今回の骨子の方に盛り込んでいる。着実にお示しできるようにしたい」と表明。「もちろん業界との協力が大前提になる。このぐらいの改革を行ったわけですから、当然業界もきっと前向きに協力していただけると認識している」と述べた。
なお、この日の総会では、2024年度費用対効果評価制度改革の骨子案も了承された。