INESと日本総研が26年度薬価改革で提言 再生医療等製品の特徴評価する有用性加算新設を
公開日時 2025/10/02 04:50
新時代戦略研究所(INES)と⽇本総合研究所は10月1日、2026年度薬価制度改革で新規モダリティの評価が焦点となるなかで、再生医療等製品の特徴を評価する有用性加算の新設を提言した。より少ない投与回数で治療効果が望めることから、臨床的価値に加え、早期の社会復帰に伴う経済的活動や患者家族・介助者・医療従事者の負担軽減を通じた社会的価値があると説明。「⻑期にわたる時間軸を考慮した価値」を適切な補正加算で薬価に反映することなどを求めた。再⽣医療等製品についての補正加算の傾斜配分ルールの⾒直しや市場拡⼤再算定の適⽤⾒直し、診療報酬制度への改善を訴えている。
提言では、再生医療等製品について、「定期的な通院や投与等の⻑期治療に伴うコストを減らすことが可能」、「患者の健康状態の改善により、患者⾃⾝の早期の社会・経済活動への復帰や⽣産性の向上を実現するのみでなく、家族や介助者の負担軽減にも寄与する」と説明。「再⽣医療等製品が社会的⽣産性や経済的価値の向上にも寄与する可能性を⽰している」と指摘した。こうした再生医療等製品の有する価値を評価するために、「⻑期にわたる時間軸を考慮した価値を、医療保険制度において適切な補正加算として価格に反映できるよう検討を進めるべき」と主張した。また、「再⽣医療等製品は、同種のモダリティであった場合、異なる適応疾患や、細胞の特性や分⼦構造の違いにより臨床的効果は⼤きく異なるにもかかわらず、その差が有⽤性加算等により適切に評価はなされていない」と指摘。「再⽣医療等製品の細胞・分⼦的特性と臨床的効果に関するエビデンスを基に、その特性が患者アウトカムの向上にどのように寄与しているかを精査し、臨床効果に合わせた柔軟な有⽤性加算を適切に設定することが求められる」とした。
◎再⽣医療等製品にかかる補正加算の傾斜配分ルールの⾒直しは「喫緊の課題」
現行制度では、再⽣医療等製品に「補正加算前の価格が1000万円以上およびピーク時市場規模予測が50億円以上」の場合、傾斜配分による補正加算の減算が実施される制度が設けられている。提言では、「再⽣医療等製品のみ、市場規模予測に基づく傾斜配分が存在することは、医薬品における新薬の補正加算の傾斜配分を廃⽌した経緯と整合性が取れず、公平性にも⽋く」と指摘。「本来補正加算の付与は、製品が患者へ提供する価値にしたがって⾏われるべき。単価の⽔準や市場規模予測といった要素に着⽬して加算率を減ずる本制度は、イノベーションの適切な評価を阻害していると考えられる」として、ルールの見直しは「喫緊の課題」と問題提起した。
また、市場拡大再算定についても改めて見直しの必要性を指摘した。「規模の経済性が働かない再⽣医療等製品においては、⼤量⽣産によるコスト削減は現状では困難であり、規模の経済性を前提とした市場拡⼤再算定の適⽤を受けた場合、企業が安定供給を継続することが難しく、患者アクセスを継続して確保することが困難になる」と指摘。「再⽣医療等製品に対して規模の経済性を前提とした市場拡⼤再算定を⼀律に適⽤することは適切ではなく、再⽣医療等製品の特性を踏まえた⾒直しの必要がある」とした。
このほか、診療報酬にも言及。「医療機関の設備投資や⼿技料・管理料の適正な診療報酬上の評価がなされておらず、医療機関側の持ち出しとなるケースが存在している」として、「再⽣医療等製品の提供に必要な⼈員・設備等の医療提供体制にかかるコストを診療報酬で⼗分に評価することに加え、医療機関による設備や⼈材への投資を正当に回収できる仕組みを組み込む必要がある」と」強調している。