自民党・鬼木厚労部会長 総合経済対策で「物価高騰・賃上げに対応できる持続可能な体制」構築に意欲
公開日時 2025/11/12 04:53

自民党厚労部会長の鬼木誠衆院議員は11月11日、本誌インタビューに応じ、政府が近く取りまとめる総合経済対策を通じ、「物価高騰や賃上げに対応できる持続可能な体制を作りたい」と意欲をみせた。鬼木部会長は、「医療・介護・福祉の業界が非常に疲弊している。公定価格のなかで物価上昇や賃上げに対応できていない。赤字が続いたり、医療従事者が現場から流出したりしており、非常に大きな打撃を業界に与えている」との課題認識を示した。(梅澤 平)
◎賃上げ・物価高対策で幅広い職種に届く支援目指す
鬼木部会長は、自民党厚生労働部会が総合経済対策に向けて取りまとめを行ったことに触れ、柱である「医療・介護・障害福祉分野の賃上げ・処遇改善、物価高対応、持続可能な提供体制の構築」が「一番大きい」との見方を示した。賃上げについては、「補正予算により、年内に一息ついてもらうということもあるが、賃上げしたら維持していかなければならない」と指摘。物価変動もあるなかで、「物価が下がったら診療報酬が下がるのかという問題もある」として診療報酬と補正予算による対応とするかは議論が必要だとの考えを示した。
そのうえで、厚労部会での議論を振り返り、「看護やリハビリ、ケアマネージャー、事務職など幅広い職種に届く支援を求める強い意見が出た。しっかりと幅広い職種に届くように、まずは臨時国会の補正予算で対応し、その先の議論にもつなげていきたい」と語った。
◎「安定供給支援事業」盛り込みたい 電子カルテ導入率ありきは疑問視
自民党厚生労働部会の取りまとめでは、「創薬力強化に向けたイノベーション・医薬品の安定供給の確保等と医療・介護DXの推進」も柱の一つとなった。鬼木部会長は、「卸も大変だと聞いている。安定供給の支援事業は盛り込みたい」と話した。
一方で、医療・介護DXの推進にあたっては、「電子カルテの普及が目的ではなく、いかに医療の生産性を上げるか、省力化につながるかが最優先。強制的に押し付けるだけでは、医療現場にとってコストや手間だけを背負わされる印象を抱かせてしまう」と電子カルテの導入率ありきの議論を疑問視。「医療DXが目指す未来を政府がきちんと説明して、ゴールを明確に示す必要がある」と注文を付けた。
◎OTC類似薬含む薬剤自己負担見直し議論で「まずは患者さんの利益を」
社会保障政策をめぐっては、連立政権を組む維新との実務者協議会のメンバーとして政策調整を担う。山積する課題に「なかなか難しい宿題」との見方を示した。
OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しも俎上に上っているが、「まずは患者さんの利益が重要だ」との考えを表明。「患者負担も考えないといけない。それによって患者が受診を控えることで、健康を損ねるのではないかという指摘もある。病院に来ないことによって、患者さんが気づかない病状とかを早期に発見できないとの声もある」と説明。「患者さんの健康や負担もよく考えて、色々なステークホルダーそれぞれの守らないといけないものを考えながら落としどころを作っていくことが必要だ」と述べた。
◎環境大臣政務官や防衛副大臣を歴任 厚労部会長は「ずっと希望していたポジション」
現在5期目の鬼木部会長は環境大臣政務官や防衛副大臣、党社会保障制度調査会幹事などを歴任。これまでに厚労部会長代理の経験もあり、厚労部会長就任は「ずっと希望をしていたポジション」(鬼木部会長)だったという。銀行員だった経歴から財政、特に社会保障費への関心が高く、「日本の素晴らしい社会保障制度を守るために、財政と社会保障の両面から持続可能なものにしていかなくてはならない」との信条を語った。
鬼木部会長は福岡市出身の53歳(1972年10月16日生)。西日本銀行(現西日本シティ銀行)や福岡県議会議員を経て、2012年衆院選で福岡2区から初当選した。趣味はラグビーや将棋。議員宿舎では書道に取り組んでおり、日々腕を磨いているという。