名古屋医療センター 富士通グループの生成AI用いた退院サマリ作成ツールの運用開始 作成時間7割減
公開日時 2025/11/20 04:51
富士通グループの富士通Japanは11月19日、生成AIを活用した医療文章作成支援サービスを名古屋医療センターが導入し、退院サマリの作成を対象に運用を開始したと発表した。同センターとの試験運用では、1患者当たりの退院サマリの作成時間をこれまでの平均28分から8分へ約7割短縮し、効率化を実現。年間約5000万円のコスト削減効果があると試算した。本サービスの導入により、患者の電子カルテデータから医師が必要な診療情報を選定・転記する負担が軽減され、患者ケアにより注力できると期待されている。
富士通Japanが開発したこのサービスは、電子カルテに入力された膨大な診療情報から生成AIが目的・要件に沿った医療文章のドラフト作成を支援するもの。富士通グループの電子カルテを導入している300床以上の急性期病院において、電子カルテの追加機能として利用できる。
本サービスは、クラウド型でありながらも専用回線を介した閉域ネットワークを活用し、診療データを生成AIが学習に利用することもクラウド上に保存することもしないため、個人情報に配慮しながら院内で安全に利用できる。また、ハルシネーション(事実と異なる内容をあたかも真実であるように生成すること)のリスク低減に向け、医療業界のノウハウと医療現場での実証実験を重ねて生成AIの精緻なチューニングを実施し、医療文書として求められる正確性や信頼性の向上に取り組んでいる。
ただ、病院経営は厳しく、医師の働き方改革や生産性の向上に貢献するとしても、初期費用や月次の利用料金が導入の障壁となる可能性がある。この点について富士通Japanヘルスケア事業本部の大西亨・第二ヘルスケアソリューション事業部長は同日の記者説明会で、「医療機関の経営が厳しい状況にある中で、有償サービスをどんどん出して喜んで使っていただけるかといえば、そうではない」との認識を示した。
そして、「導入部分と利用部分(の料金)は、全体として従量課金モデルとして商品設計している。イニシャルを多くかけずに使い始めていただけるようにしている」と述べ、初期投資のハードルは低くし、まず医師に利用してもらえる環境を提供していると説明した。