PPIにフォーミュラリ導入で年間40億超の薬剤費削減可能に 日本調剤データでシミュレーション

公開日時 2018/08/27 03:52
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消化性潰瘍治療などに用いる、プロトンポンプ阻害薬(PPI)にフォーミュラリを導入した際の経済効果は、後発品への切り替えに加え、年間40億円超の削減効果がある―。日本調剤グループの日本医薬総合研究所が8月26日、京都市内で開かれた日本ジェネリック医薬品・バイオシミラ―学会で日本調剤のデータを活用し、フォーミュラリの経済効果をシミュレーションした結果を明らかにした。後発品80%時代が近づき、後発品の使用浸透による医療費抑制効果にも限界が見えつつある。こうしたなかで、薬剤費抑制の新たな切り札としてフォーミュラリが全国的に広がる可能性が高まっている。全国的に広がればさらなる医療費削減効果も期待できる。

フォーミュラリとは、最も経済的で効果的な医薬品の推奨リストのこと。政府の策定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)で「生活習慣病治療薬の費用面も含めた適正な処方の在り方」として検討が求められている。これまで聖マリアンナ医科大学など、一部の大学病院などで活用が進められてきたが、医療機関経営が厳しさを増すなかで、地域基幹病院、さらにはこれを地域へと波及させる、“地域フォーミュラリ”の検討も進んでいる。

地域フォーミュラリについては、地域医療連携推進法人・酒田市病院機構(山形県)や、昭和大学病院などで進められるほか、日本調剤がデータ作成業務を受注した協会けんぽ静岡支部でも今秋の策定を見据えている(関連記事)。

これを地域に広げることで、地域での医療費削減効果や、保険薬局・医療機関の在庫減少などによる効率化に加え、地域における治療の標準化も期待できる。医療者自らが薬物治療の最適化と、医療費適正化に貢献できる仕組みともいえる。地域包括ケアシステム時代に入り、病院完結型から地域完結型へと医療・介護システムがシフトするなかで、転院や在宅復帰などの際に、医薬品の切り替えを防ぐことなども視野に入る。

◎ARB・ACE阻害薬へのフォーミュラリ導入にも効果


同日、結果を発表した病院コンサルタントグループの関こころ氏は、PPIに加え、降圧薬のARBやACE阻害薬、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネートの4つのクラスについて、先発品を後発品に切り替えた場合と、さらに後発品のない先発品についても同種同効薬への切り替えも加えた“フォーミュラリ”導入時の医療費削減効果をシミュレーションした。

PPIについては、後発品のあるオメプラゾール(先発製品名:オメプラール)、ラベプラゾール(同・パリエット)、ランソプラゾール(同・タケプロン)を後発品に変更。後発品の存在しないエソメプラゾール(製品名:ネキシウム)やボノプラザン(同・タケキャブ)をラベプラゾール(先発製品名:パリエット)へと切り替えることを基本ルールとして、17年度の日本調剤薬局調剤データ(17年4月~18年3月)を用いてシミュレーションを行った。

その結果、後発品の切り替えでは7億2000万円の削減効果だったのに対し、フォーミュラリ導入で、48億7000万円の削減効果が得られたという。なお、17年度の日本調剤の調剤データではPPIの処方金額は109億9800万円。このほか、フォーミュラリ導入による削減効果が大きかったのは、ARBやACE阻害薬(RAS系薬)。フォーミュラリ導入で、後発品の切り替えに4億超を上乗せした、約16億9000万円の削減効果が得られる。

一方で、スタチンについては、後発品への切り替えだけで10億9000万円の医療費削減効果が得られるが、フォーミュラリ導入によるさらなる削減効果は得られなかった。関氏は4クラスの薬剤だけで、後発品への切り替えは34億6000万円、フォーミュラリ導入で81億6000万円削減できるとして、その効果を強調した。

◎薬剤師が地域フォーミュラリ管理で「顔の見える薬剤師に」


関氏は同社の提案する地域フォーミュラリを紹介。体制案として、地域に医師、歯科医師、薬剤師、保険者などをメンバーに据えた「地域薬事委員会(仮称)」を設置し、地域で医薬品の採用・削除、フォーミュラリの運用を行う案を示した。地域フォーミュラリの管理については、保険薬局の薬剤師が主体的に行う姿を描いた。関氏は、こうした業務を通じ、“顔の見える薬剤師”となることで、「医薬分業への厳しい声に対しても、薬局薬剤師が積極的にやることで答えを出せるのではないか」と期待感を示した。


◎厚労省・安川薬事企画官 薬剤師の専門性発揮するツールに 一社ではなく連携で実施を


厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の安川孝志薬事企画官も同日講演し、フォーミュラリが、薬剤師の専門性を発揮し、医療費削減や医療の質向上などを示す「一つのツールになり得る」との考えを示した。地域フォーミュラリの策定については、「その大前提として、地域における薬局や医療機関、介護関係者、保険者などとの連携が必須」との考えを表明。門前薬局と病院との信頼関係ではなく、“地域”での連携構築のきっかけとすることを求めた。複数の薬局間での連携に難しさもはらむが、「一社だけでなく、地域でどう対応するかが大事な課題」と一社での実施は牽制した。

安川薬事企画官は、繰り返される調剤バッシングについて危機感を示し、薬剤師が「医療・介護関係者、患者、国民に専門性を示していく」ことで信頼を得ていくことが重要との考えを示した。

◎フォーミュラリ策定は薬剤師自身が積極的に情報収集を 導入後はエビデンス発出

そのひとつのツールにフォーミュラリがあると説明。2018年1月に改定された薬剤師行動規範のなかでも、「医療資源の公正な配分」が盛り込まれたことを引き合いに、薬剤師が「安全性・有効性だけでなく、医療費の適正化の視点を持つことも大事だ」と述べ、フォーミュラリ導入の意義を強調した。

フォーミュラリ策定に際しては、薬剤師が積極的に臨床試験成績や副作用情報などをもとに医薬品の特性を理解し、適切な薬剤を選択することが必要だと説明。新薬の情報はPMDAの審査報告書を活用するなどすることも一手だとの考えを示した。また、フォーミュラリ導入後は医療費の観点や医療の質的向上などで、「エビデンスを示していくべき」と述べ、薬剤師側からの積極的な発信を求めた。

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