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診療報酬改定の「改定率」めぐる攻防激化 日医は本体0.49%上回る引上げ要望 薬価大幅引下げへ

公開日時 2017/11/24 03:52

2018年度薬価・診療報酬改定の「改定率」をめぐり、日本医師会や健保連など利害関係者間の攻防が厳しさを増している。財務省が本体マイナスを求める一方で、先の解散総選挙で大勝した与党・自民党は日医など医療関係団体からプラス改定の要望を受けており、12月中に決定する18年度予算編成の作業過程で押し戻す方針だ。11月22日には日本医師会や日本薬剤師会など医療関係40団体で組織する国民医療推進協議会主催の総決起大会に与党議員が多数出席し、気勢をあげた。日本医師会も前回16年度改定の0.49%引上げを上回るプラス改定を勝ち取る姿勢を鮮明にした。一方、健保連など保険者6団体は同日、加藤厚労相に、国民負担の増大への懸念などから診療報酬のマイナス改定を要望した。

【次の焦点は薬価乖離率 前回16年度改定時の8.8%を上回る見通し】


18年度予算編成の焦点となる社会保障費の自然増圧縮については、市場実勢価格に基づく通常改定、市場拡大再算定や新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目の絞り込みなどの薬価制度改革による深堀分を加えて、1300億円相当の財源確保を財政当局が求めている。次の焦点は薬価調査における薬価の乖離率だ。前回16年度以降の医薬品マーケットは、ARBなど大型品の特許切れが相次ぎ、後発品の市場浸透も進んだ。18年度薬価改定の指標となる薬価の乖離率については、16年度改定時の乖離率8.8%を上回るとみられ、その結果が12月上旬に中医協に報告される見通し。

◎抗がん剤・オプジーボの再算定などで財源捻出の方向


自然増圧縮財源については、17年度から導入された高額療養費の負担引上げ、後期高齢者の保険料軽減特例の見直しなどもあるが、現時点では大半を薬価の引き下げで賄うとみられ、例年に見ない薬価の大幅な引下げが行われる機運が高まっている。具体的な改定内容はこれからだが、抗がん剤・オプジーボなど複数品目の再算定などで財源捻出するとの見方もある。中医協は年末に向けて薬価制度改革の議論が進むが、高額薬剤であるC型肝炎治療薬や抗がん剤・オプジーボなどが対象となる費用対効果評価の議論はまだ決着がついていない。診療報酬本体の改定率の影響にも、費用対効果評価の議論の行方が影響を及ぼすことになりそうだ。

◎総決起大会-日医・横倉会長「地域医療の崩壊はそのまま地域の崩壊につながる」

「地域医療を担う医療機関が偏印した場合一番困るのは地域の住民であり、医療がない所に人は住むことができない。地域医療の崩壊はそのまま地域の崩壊につながる」-。日本医師会の横倉義武会長は11月22日の国民医療推進協議会総決起大会で、与党自民党議員ら出席者800人を前にこう強調した。ここ数回の改定では、診療報酬本体はプラス改定を勝ち取ったものの、14年度、16年度と続けて診療報酬全体ではマイナス改定が続いている。

医療経済実態調査の結果について横倉会長は、医療機関経営も厳しさを増していると指摘。薬価差が医療機関経営に補填されていることも示し、診療報酬全体でのプラス改定の必要性を訴えた。診療報酬本体の改定率は、「前回以上(のプラス)は求めざるを得ない。前回と同じ状況であるならば薬価差益が経営原資として使えなくなるので経営ができなくなるのではないか」と述べた。

横倉会長はまた、人件費の増大が医療機関経営に影響している中で、「人件費を賄うのは診療報酬しかない」と主張。安倍内閣が2018年春闘の労使交渉で3%の賃上げを求めたことに触れ、全就業者の11.9%が医療従事者だとして、「政府として医療に携わる300万人以上の賃上げに向けた確保を診療報酬でしっかりと示すべきだ」と指摘。医療従事者に3%の賃上げを行うためには、「医療費で約6300億円、国費ベースで約1000億円、改定率1.4%相当の引上げが必要だ」との試算も示した。

◎自民党・高村副総裁「必要な財源はしっかり確保する」

総決起大会には多くの与党議員も出席した。登壇した自民党の高村正彦副総裁は、先の総選挙への謝辞を述べた上で、「総選挙の公約では社会保障制度を持続可能にする、生涯を通じた全世代型の社会保障を構築すると約束した」と説明。「必要な財源はしっかり確保すると強い決意で臨む。皆様方と共に、我が国の国民皆保険制度を守り抜くことを誓う」と述べた。

◎健保連など保険者6団体 診療報酬「マイナス改定」を要望


健康保険組合連合会(健保連)など医療関係6団体は11月22日、加藤勝信厚労相宛に、2018年度診療報酬改定について「マイナス改定とすべき」と要請した。高齢化が進む中で医療費の増大により、「国民負担は増大し、結果として国民保険制度崩壊にもつながりかねない」と指摘した。医療経済実態調査の結果からも、国公立病院以外の経営は堅調だとして、「国民負担の抑制といった観点を踏まえ、診療報酬はマイナス改定とすべき」と要望した。

同日会見した健保連の幸野庄司氏(中医協支払い側委員)は、医療費の増大による保険料引き上げに触れ、現役世代の負担も限界だとして、「薬価引き下げ分は、診療報酬本体に充当せず国民に着実に還元すべきだ」と主張した。

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