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中医協総会 厚労省が新型コロナ対応で20年度改定の経過措置延長を提案 支払側が猛反発で会長預かりに

公開日時 2020/08/20 04:52
厚生労働省は8月19日の中医協総会に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、診療報酬の経過措置の期間延長を提案した。2020年度改定では、急性期一般入院基本料の基準が引き上げられるなどされたが、医療機関の準備のために経過措置が設けられている。経過措置の期限が9月30日に迫るなかで、同省は来年(21年)3月31日まで経過措置の延長を提案した。診療側は賛同したが、支払側は幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が「エビデンスがないのに、一律にすべてを対応するのはどうなのかということを問題視している」と猛反発。支払側は一歩も譲らず、新型コロナの収束が見えないなかで、漫然と期間を伸ばすことを牽制した。この日は、合意には至らず、会長預かりとなった。

20年度改定の経過措置は、急性期一般入院料や7対1入院基本料や、回復期リハビリテーション病棟入院料1・3、地域包括ケア病棟入院料などについて、2020年3月31日時点で算定している病棟・病室は重症度、医療・看護必要度を満たしていると考えるというもの。20年度改定では、急性期一般入院料1については、重症度、医療・看護必要度Ⅰを現行の30%から31%に引き上げた。物差しとなる重症度、医療・看護必要度も見直しがなされ、手術件数などのウエイトを高めている。新型コロナの影響で、手術件数が減少したほか、交通事故の減少などで緊急搬送も減っている。医療機関にとっては、急性期一般入院料を取得するハードルがより高まっている状況にある。こうしたなかで、厚労省は経過措置の延長を提案した。

◎緊急事態宣言時はすべての医療機関を“コロナ受け入れ病院”とみなすことを提案 厚労省

同省は、新型コロナについての診療報酬上の臨時的な取り扱いを拡大することも提案した。新型コロナ患者を受け入れた医療機関では、スタッフの再配置が必要になり、施設基準がクリアできないことなどが起きている。そのため、これまでも、基本料の算定に際し、要件を満たさなくなっても、当面の間、これまでの施設基準の届け出を可能とする臨時手遅れ井的措置を設けている。厚労省は、この措置について、「職員が新型コロナウイルス感染症に感染し、または濃厚接触者となり出勤ができない医療機関」で臨時的取り扱いを行う範囲を拡大し、平均在院日数や重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率などについても認めることを提案した。また、国が緊急事態宣言を発出した場合、宣言が一部の都道府県を対象とする場合であったとしても、全国すべての医療機関について、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた医療機関に該当するものとみなすことを提案した。厚労省保険局の井内努医療課長は、「医療機関、地域が連動している。連動したなかで、コロナ患者を受け入れる直接的な影響だけではないということで全国一律で考えてはどうかと提案した」と説明した。

◎支払側・幸野委員  臨時的取り扱い“全国一律”は「大雑把で乱暴」

支払側の幸野庄司委員は、経過措置の延長について、「エビデンスが全くないなかで判断しかねる」と指摘。回復期リハビリテーション病棟では新基準を多くの医療機関がすでにクリアしているとのデータにも触れ、「そういうエビデンスがある中で、また半年伸ばすのか。エビデンスがなく、状況のわからないなかで、一律に半年伸ばすことをイエスということは支払側としてはできない」と突っぱねた。また、新型コロナ禍のなかでの臨時的措置については、「医療機関の混乱は理解している。負担軽減は大切だが、臨時的な取り扱いは、大雑把で乱暴だ」と指摘。新型コロナの感染拡大の影響についても、地域差があるなかで、「なぜ全国に臨時的取り扱いを拡げる必要があるのか。すべて一律ではなく、きめ細かく分けてはどうか」と述べた。

井内医療課長は、「新型コロナの患者が出る、出ないで受診を控えるというか、そういった影響があり、全国に影響がある」と述べ、全国一律の取り扱いにしたことに理解を求めた。

◎診療側・城守委員 手術件数や検査件数減少「全国的な傾向」 


診療側は、松本吉郎委員(日本医師会常任理事)が「患者の導線も県を跨いでいるので、全国一律で考えることが大事だ。患者があまり発生していない医療機関とそうでない医療機関の入院患者の推移を見てもあまり大きな差がないというデータもある。経過措置を認めていただくとともに全国一律ということで認めていただきたい」と述べた。

城守国斗委員(日本医師会常任理事)も、「データから手術件数や検査件数も減っていることが見て取れる。全国的にこの傾向がある。急性期病院の数も減るし、療養に至るまでの流れも少なくなり、医療機関に影響がある」と説明。「新型コロナの患者が発生するとクラスター化する可能性も高い。新型コロナ患者の受け入れの有無によらず、大変気を使った感染防止対策をしている。そういう意味では濃淡を差別化するということは困難であろう。と思うし、必要ないであろうと思う」と述べた。また、全国的に患者の受療行動に変化が起きていることも指摘。「地域別というのは、日本の狭い地域でもなかなか分別するのは困難だ。診療報酬は、もともと地域的な要素があっても公定価格で扱ってきたというのが中医協の歴史であり、それを踏襲すべきだ」と述べた。

幸野委員は改めて、「エビデンスがないのに、一律にすべて対応するのはどうなのかということを問題視している。事情が合理的であれば、個別の対応はできないものなのか」との見解を表明。これに対し、井内医療課長は、「今回提案案したのは定性的な理由がある。実状を細かくデータを取ることは今後心がけたい」、「必要なデータを診ていただけるよう、事務局としても最大限努力する」と述べた。

小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)は、「エビデンスは中医協としては一番重視しなければならない。これから経過措置を進めるにあたっても、できるだけエビデンスを集めて政策を判断する姿勢が必要だ。事務局から案が出されたが、進めるにあたってもできるだけエビデンスに基づいて進めることを要望したうえで、今回の案はいかがか」と提案した。支払側は間 宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が「パンデミックの最中であることは理解している。正確なデータがとれないという意見もあるが、非常事態だからこそきちんとしたデータを取ることが必要だ。今の状況がいつ収まるかはわからない。次に延長するときや、措置を取るときにエビデンスがあるということを示せるように注視することが必要だ」と述べるなど、支払側は一歩も引かずに会長預かりとなった。

◎レセプト件数 医科は前年同期比で4月は81.0%、5月は79.1%に


なお、同省がこの日中医協に示したデータによると、社会保障支払基金と国保連のデータによると、診療報酬別のレセプト件数は、医科は4月に81.0%(前年同月比)、5月は79.1%まで減少。調剤(保険薬局)も4月に84.2%、5月に81.9%に落ち込んだ。特に外来の落ち込みが大きく、4月は前年同月比で80.8%、5月に79.0%と前年より2割程度少なかった。病院だけでなく、診療所のレセプト件数も減少。診療科別では、小児科、耳鼻咽喉科、眼科の減少が顕著となり、患者の受療行動の変化もみられている。


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