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厚労省 新型コロナ抗体薬・エバシェルド 発症抑制目的に限り配分 投与時自己負担は3100円以下で

公開日時 2022/09/02 04:51
厚生労働省は、アストラゼネカの新型コロナ抗体薬・エバシェルド筋注セットについて、治療目的には薬剤を配分せず、同剤特有の効能であるワクチン接種では十分な免疫を獲得できない者に対するウイルス曝露前の投与(発症抑制目的での投与)に限り薬剤を配分・供給することを周知した。自治体に9月1日付で事務連絡した。同剤投与時の手技料等は自己負担となるが、投与対象者にとって過度な負担とならないことを目的に、「投与時の自己負担分の徴収金額を3100円以下とすることに協力」する医療機関にのみ薬剤を配分する方針も示した。

エバシェルドは8月30日付で特例承認された。新型コロナに感染して回復した患者により提供されたB細胞に由来する2種類の長時間作用型抗体(LAAB)であるチキサゲビマブ(遺伝子組換え)とシルガビマブ(遺伝子組換え)を併用するもの。

事務連絡では、同剤は安定供給が難しいことから一般流通は行わず、厚労省が所有した上で、対象となる者が発生した医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡するとした。

同剤の効能・効果は「SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制」で、薬事承認上は新型コロナ発症後の治療目的と、発症抑制目的に使える。しかし、▽世界的に供給量が限られている▽治療については他に使用可能な薬剤がある――との状況に加え、ワクチン接種では十分な免疫の獲得が期待されない者に対する発症抑制目的での投与を対象とした薬剤は同剤が初承認となることから、「発症抑制目的での投与に限って薬剤を供給する」とした。

◎投与対象は「積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者」など

発症抑制目的での投与対象は、添付文書では「SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種が推奨されない者又は免疫機能低下等によりSARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者に投与すること」とされている。事務連絡では、日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版」(22年8月30日)を踏まえて、

・抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者
・B細胞枯渇療法(リツキシマブ等)を受けてから1年以内の患者
・ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者
・キメラ抗原受容体T細胞レシピエント
・慢性移植片対宿主病を患っている、又は別の適応症のために免疫抑制薬を服用している造血細胞移植後のレシピエント
・積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者
・肺移植レシピエント
・固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者
・T細胞又はB細胞枯渇剤による急性拒絶反応で最近治療を受けた固形臓器移植レシピエント
・CD4Tリンパ球細胞数が50cells/μL未満の未治療のHIV患者

と具体的に明記した。また、新型コロナ感染症患者の濃厚接触者ではない者が対象で、濃厚接触者への有効性は示されていないことも改めて周知した。

◎在庫配置は認めない

同剤の所有権は厚労省に帰属し、流通を委託する社を通じて対象医療機関に配分される。投与対象者に使用された時点で、対象医療機関に無償譲渡される。

配分を受けられる対象医療機関の要件のひとつに、投与時の手技料等の自己負担分の徴収金額を3100円以下とすることに協力することがあるが、この金額は診療報酬点数のうち初診料288点、注射実施料(皮内、皮下、筋肉内注射)22点を参考にしたとしている。

同剤の配分を希望する対象医療機関は都道府県に申し出る。在庫配置に関しては、「発症抑制(曝露前)に限って配分をするものであり、計画的な投与が可能であることから、在庫配置は認めていない」とし、対象者への投与分を都度発注してほしいと呼びかけている。
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