IQVIAは６月23日、2027年度までの日本の医療用医薬品市場の展望を発表した。特許期間中の医薬品市場（23年度以降上市の新有効成分の新薬を除く。以下、「特許品」）の22～27年度の５年平均成長率（CAGR）はプラス6.5～7.5％となり、市場を1.7～1.8兆円押し上げると分析。さらに23～27年度に上市が見込まれる新薬の市場規模は1.1～1.2兆円で、新薬と特許品の合計で市場は2.8～3.0兆円拡大すると予測した。ただ、市場全体でみると、新薬と特許品による成長は特許切れ市場の縮小で相殺されて5000億円前後の拡大にとどまり、５年CAGRはプラス0.5～1.5％になるとしている。

IQVIAジャパングループThought Leadershipマネージャーの高山莉理子氏は、この日のオンライン説明会で、「一見すると、日本は低成長に見えるが、なかをひも解くと、市場が拡大するところと縮小するところでかなりメリハリがついた市場構造になっている」と解説した。

◎27年度の国内市場　11兆円台にのる可能性も

同社は最新の国内医療用薬市場の動向などを踏まえ、市場予測をアップデートした。薬価の毎年改定も織り込んだ。一方で、同社データには新型コロナのワクチン及び治療薬の政府購入分が反映されていないほか、コロナ禍で市場が急拡大した新型コロナの検査試薬も今回、集計対象から外した。

同社は、27年度の国内医療用薬市場（薬価ベース）は10兆9630億円～11兆1630億円となり、11兆円台にのる可能性があると分析した。22年度は10兆5090億円だったため、５年間で5000億円前後拡大することになる。

医薬品のセグメント別に市場規模の増減をみると、▽特許品はプラス1.7～1.8兆円、▽23年度～27年度上市新薬は新たに1.1～1.2兆円、▽23年度～27年度の長期収載品はマイナス1.5～1.6兆円、▽22年度より以前の既存長期収載品はマイナス0.9～1.0兆円、▽後発品はプラス1000億円前後――などとなる。

◎スペシャリティ医薬品　27年度に全市場の46％占める見通し

セグメント別に詳細に見てみると、今後上市が見込まれる新薬は、専門医の診察・処方が必要となるスペシャリティ医薬品やバイオ医薬品が多くなり、27年度までの市場成長を支える見通しだ。同社によると、全市場に占めるスペシャリティ医薬品のシェアは17年度31.7％、22年度39.0％、27年度46.4％――に右肩上がりに推移し、５年後の日本市場の半分がスペシャリティ医薬品になると予想した。全市場に占めるバイオ医薬品のシェアは同19.9％、27.2％、34.4％――に拡大するとした。

◎新薬と特許品による市場規模　米国に次ぐ世界２位

同社Thought Leadershipディレクターのアラン・トーマス氏は、新薬と特許品で構成された市場で見た場合、日本は米国に次ぐ世界２位の市場規模だと説明した。さらに、「日本は少なくとも27年度までは２位であり続ける。（新薬と特許品による市場は）バイオ医薬品やスペシャリティ医薬品で拡大し、引き続き魅力的な市場であり続ける」と語った。ただ、日本での新薬開発への投資が今後も継続されるためには、「イノベーションを推進する環境は必須だ」とも強調した。

◎後発品市場は成長鈍化　「黄金期と比べるとかなり様相が違ってきた」

毎年改定の影響が大きい特許切れ市場を見てみると、長期収載品は今後2.4～2.6兆円縮小し、27年度の市場規模は9000億円台になると分析した。27年度までの５年CAGRはマイナス8.0％～マイナス7.0％と見込んだ。

後発品市場は27年度までの５年間で1000億円前後の伸びとなるが、22年度までの５年間は2000億円伸びており、今後は成長が鈍化する見通しだ。実は22年度の後発品の市場規模は前年度比1.5％減となり、過去10年間で初めてマイナス成長に転じている。高山氏は、後発品市場は数量シェア80％を達成して成長余力が小さくなり、毎年改定による加速度的な薬価下落の影響も大きいとした上で、「後発品市場は黄金期と比べるとかなり様相が違ってきた」とし、「企業戦略として、安定供給や品質問題も含め、非常に重要な転換点を迎えていると考える」と述べた。

なお、同社は、後発品の数量シェアは23年１～３月期が81.3％で、28年１～３月期は83.5～84.5％になると予測している。