新規抗菌薬・フェトロージャ 12月20日に薬価収載へ 中医協総会
公開日時 2023/12/14 04:50
中医協総会は12月13日、新薬2成分3品目の薬価収載を了承した。収載日は12月20日。塩野義製薬の新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬・フェトロージャ点滴静注用1g(注射用セフィデロコルトシル酸塩硫酸塩水和物)で、AMR(薬剤耐性)に対する抗菌薬として緊急収載される。薬価は有用性加算(I)35%の加算が付いて1g1瓶2万203円。1日薬価は12万1218円。同剤は、厚労省が2023年度から試行導入した「抗菌薬確保支援事業」の対象薬剤に初めて採択された。このほか、エーザイのアルツハイマー病治療薬・レケンビ点滴静注(一般名:レカネマブ)の薬価収載も了承された。12月20日の収載日に即日発売する。
12月20日付で収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)。
▽フェトロージャ点滴静注用1g(セフィデロコルトシル酸塩硫酸塩水和物、塩野義製薬)
薬効分類:612 主としてグラム陰性菌に作用するもの(注射薬)
効能・効果:〈適応菌種〉セフィデロコルに感性の大腸菌、シトロバクター属、肺炎桿菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア・マルセスセンス、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、緑膿菌、バークホルデリア属、ステノトロホモナス・マルトフィリア、アシネトバクター属――。ただし、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株に限る。〈適応症〉各種感染症
薬価:1g1瓶 20,203円(1日薬価:121,218円)
市場予測(ピーク時8年後):投与患者数1.0千人、販売金額15億円
加算:有用性加算(I)(A=35%):「本剤は初のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬であること、非臨床試験において既存治療薬に非感受性の菌株に対する抗菌効果が示唆されていること等から、有用性加算(I)(A=35%)を適用することが適当と判断した」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:薬剤耐性菌治療薬)
費用対効果評価:該当しない
国内唯一のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬。多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれる。その結果、有効成分のセフィデロコルは細菌のペリプラズム内に取り込まれ、細胞壁合成を阻害する。
厚労省の抗菌薬確保支援事業は、AMR対策の一環として23年度から新たに試行導入されたもので、抗菌薬の販売を手がける製薬企業の収益の一定額を保証する制度のこと。企業が国の薬剤耐性対策(販売量の適正水準維持)に協力することで生じる減収に対して一定額を国が支援すると同時に、抗菌薬の開発を促す仕組みを作ることで、薬剤耐性対策を推進することを目的としている。フェトロージャは11月に同事業に採択された。
塩野義製薬はフェトロージャを22年3月に承認申請した。そして今年11月27日の薬食審・医薬品第二部会を通過し、そのわずか3日後の11月30日に承認され、今回緊急収載される。
▽レケンビ点滴静注200mg、同500mg(レカネマブ(遺伝子組換え)、エーザイ)
薬効分類:119 その他の中枢神経系用薬(注射薬)
効能・効果:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
薬価:200mg2mL1瓶 45,777円
500mg5mL1瓶 114,443円
加算:有用性加算(I)(A=45%):「本剤はミクログリアによる食作用を介した可溶性アミロイドβプロトフィブリル除去作用を有する新規作用機序医薬品であること、臨床試験では臨床的に意義のある有効性が示され、既存の治療方法で効果が不十分な患者群においても効果が認められたこと、初めて認知症の進行抑制が認められた薬剤であること等から、有用性加算(I)(A=45%)を適用することが適当と判断した」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:加算適用)
費用対効果評価:該当する(H1)
新規作用機序の抗Aβプロトフィブリル抗体。強い神経細胞毒性を示すことが報告されているAβプロトフィブリルに選択的に結合し、ミクログリアによる食作用を介してこれを除去することにより、早期アルツハイマー病(AD)患者におけるADの疾患進行による臨床状態の悪化を抑制する。
最適使用推進ガイドラインが策定された。全例調査の実施が承認条件となった。
効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」。あくまで進行を抑制するもので、アルツハイマー病を治癒するものではない。用法・用量は「通常、10mg/kgを、2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する」。
製造販売元はエーザイで、バイオジェン・ジャパンと共同販促する。