自民党厚労部会 総合経済対策の重点事項 医療職の賃上げや経営改善を支援 安定供給・医療DX推進も
公開日時 2025/11/10 04:50
自民党・厚生労働部会は11月6日、「総合経済対策における重点事項案」を部会長一任で取りまとめた。重点事項案では、「2026年度報酬改定も視野に入れつつ、各分野の経営状況や他産業の状況も踏まえ、医療・介護・障害福祉分野における更なる賃上げに向けた支援や食材料費・光熱水費等、物価高騰に対応するための支援」を明記した。一方で、持続可能な医療提供体制構築に向けて、地域医療構想、働き方改革、医師偏在対策を「三位一体で着実に行う」ことも盛り込んだ。「創薬力強化に向けたイノベーション・医薬品の安定供給の確保等と医療・介護DXの推進」を章立てし、「医薬品卸による安定供給の維持・強靱化に向けた取組の支援」などを盛り込んだ。今臨時国会で成立を目指す補正予算への反映を目指す。
重点事項案では、「医療・介護・障害福祉分野の賃上げ・処遇改善、物価高対応、持続可能な提供体制の構築等」を掲げた。「医療・介護・障害福祉分野においては、物価高騰に伴う食材料費・光熱水費負担の増加に加え、近年の賃上げの流れは他産業に先行される状況にある」と指摘。生産年齢人口の減少も相まって、「人材の確保は困難な状況となっており、サービス提供体制は危機的事態となっている」と危機感を示した。こうした事態を打開するために、「これらの分野の現場で働く幅広い職種の賃上げや医療機関、薬局、介護施設等の経営の安定に向けた支援を行う」ことを明記。一方で、「地域ごとに大きく異なるサービス需要等に対応し、必要なサービスを効率的に、将来にわたって持続可能な形で提供できる」ことを目指すことも盛り込んだ。
賃上げ・処遇改善、物価高対応としては、賃上げ支援などに加え、「現下の建築費等の高騰を含む経済状況の変化により施設整備等が困難な医療機関に対する支援を行う」ことも盛り込んだ。また、産科・小児科医療機関等への対応、独立行政法人福祉医療機構による優遇融資の実施に必要な財政基盤及び審査体制等の強化の必要性を指摘した。
◎地域における医療機関の連携・再編・集約化 需要を踏まえた病床数適正化で予算確保
一方、持続可能な提供体制の構築に向けて、「2040年を見据えた医療提供体制の構築のため、地域医療構想の取組等、医師・医療従事者の働き方改革の推進、実効性のある医師偏在対策の推進を三位一体で着実に行う」ことも明記した。「地域における医療機関の連携・再編・集約化のため、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化について、医療機関のニーズに応えられる必要な予算を確保し、支援を行う」ことも盛り込んだ。
◎医療・介護DX推進 医療等情報の2次利用推進で「電子カルテ情報DB」構築へ
医薬品関連では、「我が国の創薬力の強化に向けたイノベーションの推進、国内における医薬品の生産体制・安定的供給の確保とともに、より質の高い医療・介護サービス提供に向けた医療・介護のDXの取組等を進める」必要性を指摘した。
そのうえで、「電子カルテ情報共有サービスの運用開始に向け、効果検証・課題収集等を行い、全国医療情報プラットフォームを構築するとともに、電子処方箋の普及・利用拡大を促進する。電子カルテの標準化を進めつつ、クラウド型電子カルテの普及を図る」ことも盛り込んだ。また、「医療等情報の二次利用を推進するため、情報連携基盤や電子カルテ情報データベース(仮称)の構築に向けた設計・開発を行う」としている。
◎創薬力PT 緊急提言で文言修正 後発品産業構造改革で「有事に対応できる生産性向上を」
自民党社会保障制度調査会の「創薬力の強化育成等に関するプロジェクトチーム」が取りまとめた「経済対策に向けた創薬力強化に関する緊急提言」は、文言を一部修正した。
後発医薬品を中心とした産業構造改革については、「後発医薬品企業の生産性向上や大規模化が図れる生産、品質管理体制の構築、企業間連携の推進に伴う一定のコスト負担を考慮する」必要性を指摘。「政府の支援が欠かせないため、後発医薬品製造基盤整備基金により、産業力の強化に繋がる品目統合・事業再編等の計画を認定した企業に対し、有事にも対応出来うる生産性向上に向けた製造設備投資や事業再編経費への助成を進めるべき」として、有事に対応する必要性を盛り込んだ。
創薬に関する人材や資金供給の脆弱性としては、「アカデミア・国立研究機関、製薬企業、スタートアップ企業等の創薬エコシステムのプレイヤー人材の流動化」と具体的に明記した。