
厚労省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」は12月15日、一社流通について議論を行い、医者流通品の情報提供不足が焦点となった。厚労省が流改懇に報告した調査結果からも、情報提供が不十分であるがために取り扱い卸を探すのに手間がかかり、結果として診療や投薬に影響が出るなどの不適切事例が報告された。流通改善ガイドラインでも一社流通については「丁寧な説明」が求められている中で、実効性も課題だ。メーカー側の説明責任を問う声もあがるなかで、製薬協の構成員が一社流通のパターンに応じた最適な情報提供のあり方を卸連とともに検討する考えも示した。
◎一社流通の情報提供「適切な回答がなかった」305事例 「回答はなかった」199事例
厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課はこの日、流改懇に一社流通についての照査結果を報告した。調査は、医療・薬局関係団体の協力の下、61施設(医療機関34、薬局27)から回答を得た。調査は24年12月に依頼し、今年2月に回答をまとめた。
一社流通である理由について情報提供を求めたが、適切な回答がなかった305事例あった。このうち、卸売販売業者に情報提供を求めたケースが265事例。「回答はなかった」のが199事例、「説明の内容が不十分だった」のが84事例あった。製造販売承継に伴う取引卸の変更について連絡がなかった事例が報告された。また、取引卸を探すのに時間がかかるなどして、「患者に迷惑をかけた」など、一社流通により、卸の探索や新たな卸との契約手続に時間要することが原因となって、診療や投薬、処方に支障を及ぼした事例も報告された。
◎卸連・折本構成員 メーカーに文書や電子媒体で情報明確化求める
一社流通による“情報提供不足”が浮き彫りとなる中で、折本健次構成員(日本医薬品卸売業連合会参与)は「卸売連合会としては大変マズイと思っている。残念ながら取引ができないとしても調達のご支援をするのが卸の使命だ。卸連としては真剣に深掘りして対応を求めたい」と述べた。そのうえで、「色々な理由はメーカーさんにもあろうかと思うが、手段を明確にしないと、MSも医療機関・薬局に説明がしがたい。文書および電子媒体の手段は、次回ガイドラインまでの改訂、また途中での議論でぜひ深めていきたい」と述べた。
原靖明構成員(日本保険薬局協会(NPhA)医薬品流通検討委員会副委員長)は「薬局や医療機関側が情報提供を求めているのにもかかわらず回答がないというのは、驚くべき結果だ」と指摘。調査結果だけではメーカーと卸、どちらに問題があるかわからないとして、「もう少し踏み込んで調査をしていただきたい」と事務局に要望した。
また、「かなりの高額であり一社流通先の卸にもあまり在庫をしていないのか、急配依頼した際に必要量の一部しか入ってこず一部欠品になってしまうことがある」などの回答が寄せられているものの、事務局が「一社流通品に起因する事象と特定することは難しい」と整理したことにも言及。「そういう薬を一社流通で許していいのかどうか。一社流通のために患者さんに不利益を起こしている可能性が私は高いと思ってこのアンケート結果を読んでいる。そこについてはもう少し深く掘っていただきたい」と要望した。
小山信彌構成員(日本私立医科大学協会参与)は、「もともとの話だが、誰が一社流通にするのか。卸なのかメーカーなのか。卸がだいぶ責められている感じがするが、一番の根本はやっぱりメーカーだ」と詰め寄った。
◎製薬協・武岡構成員 一社流通のパターンを把握「卸連と最適な情報提供を分析する」
これに対し、武岡紀子構成員(日本製薬工業協会(製薬協)流通適正化委員会 常任運営委員)は、「様々なパターンの一社流通があるかと思う。日本で上市する上で、そもそも会社として取引を決定した卸さんとやっているパターンだとか、様々なパターンがあるということまでは把握しているが、詳細に関してパターン全てが把握できているわけではない」と説明。「卸連と密に連携をしながら、様々なパターンにおいてどういった形で情報提供することが最適なのか、そういった分析をしながら、誰が悪い、どっちが悪いとかではなく、一緒に建設的に密に連携しながら情報を提供できる方法を検討していきたい」と述べた。
これに対し、小山構成員は「話を聞いてると、卸が説明してないような言い方だが、やっぱり話してないから伝わってない」と指摘。メーカーに一社流通の理由を尋ねても「契約上の理由で答えられない」などの返答があるとして、「(メーカーが)話せれば(卸も)話すと思う」と指摘した。
◎一社流通の目的が「価格コントロール」の事例も
医療機関の構成員からは、一社流通により価格をコントロールすることを問題視する声も相次いだ。「現場で一番困ったのは価格交渉できないということ」(小山構成員)など、一社流通では価格交渉ができないことを指摘する声があがった。
原構成員は「メーカーが一社流通を恣意的にやるのであれば、それは大変な問題だ。同時に、一社流通にした方が、流通経費が安く済むことも大変問題で、そのために安定供給が担保されていないものは認められない」との見解を示した。
眞野成康構成員(日本病院薬剤師会副会長)は、「一社流通で突然卸が変わったので理由を聞いてみると、その前の卸は値引きしすぎたという話だった。一社流通を価格をコントロールするためにやっているのではないかと思うような事例もある。そういうことも含めて調査をして一社流通のあり方を考えていただきたい」と指摘した。
眞鍋雅信構成員(日本医薬品卸売業連合会)は「医薬品の卸の大前提として一社流通品であれ、そうでないものであれ、適切で合理的な価格形成に努めている。一社流通の取引の中でも、合理的で適切な価格形成が図られるべきだ」との見解を示した。
一方で、薬価差益を求める意見が川下の委員から上がる中で、宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は乖離率が縮小する中で、「医療機関を含めて、薬局を含めて利益(薬価差)を求めるという時代はない」と指摘。「時代錯誤になってくるというところがあるので、経営者としてどうあるべきかということも含めて、考えていかなければいけない問題だろう」と説いた。