財務省主計局は４月13日の財政制度等審議会財政制度分科会で、22年度診療報酬改定で導入されたリフィル処方について、「患者・国民目線からその積極的活用が図られるべき」と主張した。「患者の希望やニーズの充足を阻害する動きがないかといった運用面を含めたフォローアップを徹底するとともに、制度の普及促進に向けて周知・広報を図るべき」とした。また、保険者に対するインセンティブ活用の必要性も盛り込んだ。このほか、24年度からスタートする第４期医療費適正化計画を見据え、後発品の使用促進に加え、地域フォーミュラリの策定やリフィル処方への切り替えなどを目標に盛り込むことを提言した。

リフィル処方をめぐっては、22年度診療報酬改定に向けた昨年末の鈴木財務相・後藤厚労相の大臣折衝では、「再診の効率化」として▲0.10％（医療費470億円程度）を見込んだ。財務省主計局は、個の適正効果を「着実に達成すべきことは当然」と主張した。そのうえで、普及を阻害する動きを牽制。「患者の症状によってではなく医療機関としてリフィル処方に対応しない方針を掲げている事例や処方箋のリフィル可欄に患者への特段の説明や患者の同意がなく打消し線が入っている事例等について、精査する必要がある」と踏み込んだ。

◎リフィル処方　新型コロナで「導入ニーズは高まっている」

高血圧や糖尿病などの生活習慣病で、長期にわたるDo処方が行われており、薬をもらうためだけに診察を受ける“お薬受診”が多いことも指摘されている。財務省主計局は、「診療密度が薄く頻繁な外来受診こそが、待合室の混雑、待ち時間の長さ、その割に短い診療時間といった国民が日頃体験する我が国外来医療の実態につながっており、頻回の受診による身体的・経済的負担と相まって、患者の通院負担を重いものとし、利便性も損なわせてきた」と指摘。こうしたなかで、導入されたリフィル処方については、「感染防止の観点から不要不急の通院を避けたい事情が患者側に生じている 新型コロナ禍において、導入のニーズは高まっており、時宜を得た導入となった」と評価した。

導入により、医師の働き方改革が推進され、診療に時間を割けることで、医療の質向上が期待できると指摘。さらに、処方箋料や再診料の効率化により国民負担が軽減されることから、「効率的で質の高い医療提供体制の整備の一環をなす取組として、大いに歓迎すべき」と強調した。

◎薬学的管理・指導を的確に行える薬剤師の専門性発揮を

一方で、薬局・薬剤師については、患者のための薬局ビジョン策定から指摘されていた、第４期医療費適正化計画などを「強力に後押しするものであり、患者本位の医薬分業が実現する転機となることが期待される」とした。具体的には、症状の安定している患者について薬剤師が服薬管理を行うことで、「医師から薬剤師へのタスクシフトや医師と薬剤師の連携・役割分担の深化が見込まれる。薬剤師が患者への薬学的管理・指導を強化することで、患者にとって不必要なDo処方を見直したり、多剤・重複投薬や残薬の解消につながったりする可能性がある」と強調した。

さらに、これまで処方箋枚数の獲得により成長してきた薬局だが、リフィル処方の導入により医療機関の近隣にある薬局を活用する必然性も減る。こうした患者の行動変容により、「薬局は医療機関の近隣という立地で患者から選択される存在から脱却し、患者の服薬状況などを確認し、必要に応じて受診勧奨を行ったりするなど、薬学的管理・指導を的確に行える薬剤師の専門性や様々な患者・住民のニーズに対応できる機能を発揮することを通じて患者に選択してもらう存在として飛躍を遂げる可能性がある」と期待を込めた。

◎地域フォーミュラリ策定、多剤・重複投薬の解消などは医療費適正化計画で

また、リフィル処方の導入による医療費の適正化も焦点となるなかで、第４期医療費適正化計画の目標値に盛り込むことも提案した。後発品80％目標が示されたなかで、これまで後発品の使用促進が目標に盛り込まれてきた。

財務省主計局は、「都道府県医療費適正化計画において、後発医薬品の使用促進のみならず、地域フォーミュラリの策定、多剤・重複投薬の解消、長期 Do 処方からリフィル処方への切替え、都道府県域における公立病院における費用構造の改善など、“医療の効率的な提供の推進に関し、達成すべき目標”について充実・具体化を図り、都道府県における医療費適正化努力を促していくべき」と提案した。