【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

製薬協・岡田会長 新薬創出等加算を“患者アクセス促進・薬価維持制度”に刷新を提案 有識者会議

公開日時 2022/09/26 04:57
日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長は9月22日、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(座長:遠藤久夫学習院大経済学部教授)」で、新薬創出等加算を“患者アクセス促進・薬価維持制度”に刷新することを提案した。特許期間中の革新的新薬を市場実勢価格による改定の対象から除外し、薬価を維持するというもの。上市後に得られたエビデンスやガイドラインにおける位置づけの変化に基づき、価値を再評価し、薬価を見直す仕組みをセットで導入するとした。また、ドラッグ・ラグの緊急対応として、欧米よりも上市が遅れている品目にインセンティブをつけることを提案した。ただ、遠藤座長は加算が創出されることで、製薬企業があえて日本での申請を遅らせるモラルハザードが起きる可能性を指摘した。

◎新薬創出等加算は「初期の目標を達成したと考えている」岡田会長


岡田会長は新薬創出等加算が2010年度に試行的導入されて以降、「目標とした後発品比率が8割をほぼ達成し、新薬メーカーは長期収載品の収益に依存せず、新薬の収益を次の研究開発に再投資するというサイクルをしっかり定着させてきた。このことから新薬創出等加算については初期の目的を達成したと考えている」との見方を示した。「市場実勢価改定方式の課題への対応とあわせて市場の魅力度向上に資する分かりやすい新薬価制度の構築がまさに必要なタイミングではないか」と強調した。

そのうえで、革新的新薬の薬価を維持する“患者アクセス促進・薬価維持制度”を提案した。対象品目は、「いまの新薬創出等加算の品目要件、それが準用されることを想定している状況だ。後段にあった早期上市インセンティブの品目についても維持すべきだと考えている。品目用件を現状から大きく拡大するというようなことは考えていない」(日薬連薬価研委員長で、製薬協産業政策委員会委員長の赤名正臣氏(エーザイ))とした。

審査報告書ベースの現行薬価制度ではイノベーションが十分評価されない

価値評価のプロセスを改善する必要性も指摘。薬価算定に際し、薬事審査を目的とする報告書をベースに実施されている。岡田会長は、「ある意味イノベーションが十分に評価されていない」と指摘。「そのような審査報告書をベースとした現行の薬価算定では、新規性、革新性の高い新薬を日本で世界に先駆けて評価するということが非常に難しい。従って、海外での臨床ガイドラインや保険者による評価が確立するまで、日本で早期に上市することが困難な場合があるというのが現状だ。これが日本の優先順位が落ちる原因であり、ドラッグ・ラグ等の要因の一つであると考えている」と述べた。また、「医薬品の持つ多様な価値をしっかりと議論し、評価に反映していくための仕組みを導入していくことが必要なタイミングではないか」とも述べた。このほか、類似薬効比較方式においては、「柔軟な類似薬選定」が必要であることも指摘した。

現行では革新性の高い医薬品は原価計算方式で算定されるケースが多いが、新たな制度の導入で、「類似薬を柔軟に選定するようになれば、原価計算方式で算定される品目は少なくなると考えている。ただ一方で全てなくしていいのかということについては、まだそこまで我々も考えていない。ルール上、選択肢からなくして良いとは考えてはいない」(赤名氏)とした。

◎遠藤座長「薬価基準制度で自国の製薬産業の競争力を高めるというのはなかなか難しい」

遠藤座長は、「薬価基準制度で自国の製薬産業の競争力を高めるというのはなかなか難しいだろうと思っている。私個人的には日本の製薬産業が発展することを非常に望んでいるが、薬価基準制度、社会保障制度というのは外資、内資全く無差別に対応するというものだ。別の仕かけが必要だと思っている」と指摘した。これに対し、岡田製薬協会長は、「革新的新薬についてはグローバルスタンダードな価値付けをしてほしいということだ。では、それが産業政策かどうかというのは全く別の話だと思っている」と説明。「産業政策ということで見ると、いまや科学技術、イノベーションに関する競争は、企業間はもちろんあるが、国家をあげて様々な支援をしているというなかで動いている。国家支援の観点が必要だという風に思うし、いわゆる日本におけるイノベーションのエコシステム構築という観点がある。健康医療ビッグデータを含めたデータの利活用、いくつかの要素によって、産業政策というのは講じられていくと思う。おそらく内資系企業も、長期的に見ると、決してオプティミスティック(楽観的)とは言えないような日本市場だけで産業が成立していくのかというと非常に難しいと思っている。まさに世界で勝てるというか、医薬品という商材はボーダレスなので、日本への貢献はもとより、国家の経済成長の牽引となりますと、米国をはじめとする世界の市場でいかに我々のスタンスを発揮できるかというところが一番大きいところではないか」と述べた。

◎菅原委員「イノベーションは原価計算方式で評価することに違和感を覚えている」


菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は、「イノベーションは原価計算方式で評価することに関しては違和感を覚えている」との認識を表明。「膨大な人件費や時間を投入していることに対するリスク負担などは明示的に原価のなかで評価されていない。これも実態に合っていない」と指摘。最終的に利益率で調整しているものの、「画期的なものを作っても産業平均でしか評価されないという話なので、いまのやり方のツールとしては、イノベーションの評価に合っていないと思っている」と強調した。他国では何らかの形で価値評価を取り入れているとして、「グローバルなイノベーションの評価という形に、我が国のイノベーションの評価のあり方を考え方の方向性としてベクトルとして合わせていかなければ日本の国にイノベーションは起きないと私は思っている」と述べた。

◎坂巻構成員「技術革新で薬価が下がることでディスインセンティブにならないように」

このほか、坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は、「イノベーションのなかには、連続生産など製造技術の革新によってむしろ原価が下がって、価格としては安くさせる方向に働く部分もある」と指摘。「こういった技術革新で薬価が下がることによってディスインセンティブにならないように、どういった価格設定にすれば良いのかという議論は、これからぜひ一緒にさせていただきたい」と述べた。医薬品の持つ価値については、患者に対するものに加え、「もちろん社会、医療システムに関する価値というものもあると思う。そういったことをきちんと評価していくということは大賛成なので、具体的にどう評価するのか、どう薬価に反映するのかということに関しては、重要な議論だと考えている」と述べた。

プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(2)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

【有識者会議・9月22日 城審議官・新構成員挨拶、日薬連、製薬協のヒアリング・発言要旨(その1)】

【有識者会議・9月22日 城審議官・新構成員挨拶、日薬連、製薬協のヒアリング・発言要旨(その1)】

2022/09/26
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の第1回会合が9月22日に開催された。この日は日薬連など製薬5団体から業界の現状と課題に係るヒアリングを行った。本誌は、検討会の冒頭から5団体のヒアリングまでの内容を発言要旨として公開する。
【有識者会議・9月22日 GE薬協、PhRMA、EFPIAのヒアリング・発言要旨(その2)】

【有識者会議・9月22日 GE薬協、PhRMA、EFPIAのヒアリング・発言要旨(その2)】

2022/09/26
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の第1回会合が9月22日に開催された。この日は日薬連など製薬5団体から業界の現状と課題に係るヒアリングを行った。本誌は、GE薬協、PhRMA、EFPIAの各団体のヒアリングの内容を発言要旨として公開する。
【有識者会議・9月22日 有識者会議の構成員と製薬業界5団体との質疑 発言要旨(その4・後半)】

【有識者会議・9月22日 有識者会議の構成員と製薬業界5団体との質疑 発言要旨(その4・後半)】

2022/09/26
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の第1回会合が9月22日に開催された。この日は日薬連など製薬5団体から業界の現状と課題に係るヒアリングを行った後に、有識者会議の構成員との間で質疑が行われた。本誌は質疑の内容について発言要旨として公開する。
【有識者会議・9月22日 有識者会議の構成員と製薬業界5団体との質疑 発言要旨(その3・前半)】

【有識者会議・9月22日 有識者会議の構成員と製薬業界5団体との質疑 発言要旨(その3・前半)】

2022/09/26
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の第1回会合が9月22日に開催された。この日は日薬連など製薬5団体から業界の現状と課題に係るヒアリングを行った後に、有識者会議の構成員との間で質疑が行われた。本誌は質疑の内容について発言要旨として公開する。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー