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【Focus】高額薬剤議論で浮上する3つの視点 焦点はマーケット 適正使用がカギに

公開日時 2016/05/09 03:53

抗がん剤・オプジーボ点滴静注に端を発した高額薬剤の論議が注目されている。財政制度等審議会では、オプジーボの薬剤費だけで年間1兆7500億円との試算も示され、1剤だけで医療保険財政が破たんするとの問題意識が示されている。高額薬剤の相次ぐ登場が想定される中で、こうした課題は、費用対効果評価による薬価の再評価だけでは解決が難しい。領域別に新たな選択肢を模索する動きが水面下で見られている。がん領域などで医療施設や医師などを限定する適正使用指針の策定、生活習慣病領域における地域での標準薬のリスト化、これに費用対効果評価による薬価の再算定の3つの視点が今後浮上することが想定される。“適正使用”をカギとした施策が検討される中で、製薬企業にとっては、プロモーションの根幹を見直すことも迫られることになりそうだ。


◎C型肝炎治療薬 費用対効果評価での薬価再算定 マーケットでの議論に



1つ目の視点が、費用対効果評価による薬価の再算定だ。4月から費用対効果評価が試行的に導入されるが、C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠、ソバルディ錠(ギリアド・サイエンシズ)、ヴィキラックス配合錠(アッヴィ合同会社)、ダクルインザ錠、スンベプラカプセル(いずれも、ブリストル・マイヤーズ)、抗がん剤・オプジーボ点滴静注(小野薬品)、カドサイラ点滴静注用(中外製薬)の7品目が対象となる。

注目したいのが、5品目が対象となったC型肝炎治療薬だ。類似薬効比較方式で、▽補正加算の加算率が最も高い、▽10%以上の補正加算が認められたものの中で、ピーク時予測売上高が最も高い――薬剤に該当したソバルディ錠、そしてその類似品として4品目が選定された。類似品は、薬理作用の類似薬とされているが、純粋な作用機序だけで考えれば、類似品はハーボニー配合錠のみだ。実際、2016年度薬価改定で導入された特例拡大再算定ではソバルディ錠が対象となったが、類似品とされたのはハーボニー配合錠だ。

ハーボニー配合錠はNS5A阻害薬・レジパスビルとNS5B阻害薬・ソホスブビル(ソバルディ錠)の配合剤だ。しかし、ヴィキラックス配合錠は、NS5A阻害薬・オムビタスビル/NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬・パリタプレビル/リトナビルの3剤の配合剤。NS5A阻害薬・ダクルインザ錠とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬・スンベプラカプセルは、併用下で用いられる。ソバルディ錠のようなNS5B阻害作用をもつ薬剤は含まれておらず、異なる作用機序をもつ薬剤と言える。

しかし、これらの薬剤には共通項がある。いずれの薬剤もこれまでC型肝炎治療薬の柱とされてきたインターフェロン(IFN)を併用しないでも投与できる、“IFNフリー”と呼ばれる新たなマーケットの薬剤であるという点だ。逆に言えば、IFNフリーの薬剤はすべて費用対効果評価の対象品目となったことになる。例えば、ハーボニー配合錠は、著効率100%という治癒率の高さが注目されたが、薬価も特例拡大再算定で31.7%引き下げられたものの、5万4796円90銭と高額だ。C型肝炎治療薬のような治癒を見込める薬剤は、費用対効果評価が優れるとの結論になることが想定される。しかし、同一のマーケットにあるすべての薬剤の費用対効果評価が出揃うことは、マーケット内での比較を可能にすることをも意味している。


◎抗がん剤など 学会、PMDAで適正使用指針策定へ


2つ目の視点が、関係学会とPMDAの協力により、高額薬剤の適正使用を推し進める適正使用指針を策定することだ。抗がん剤・オプジーボ点滴静注は、治療前に有効な集団の特定ができないことや、無効例・有効例ともに投与を中止すべきかが不明確であることなどが課題として指摘されている。こうした中で、その薬剤を主に用いる学会が中心となり、施設要件や医師要件などを明確にすることで、医療界自ら、適正使用をすすめてもらうことを目指す。保険適用の段階で留意事項通知などにより周知を徹底することも視野に入れる。すでにステントなどの医療機器では、施設要件や医師要件などを留意事項通知で示すことで、適正使用が進められている。


◎生活習慣病治療薬 フォーミュラリ策定で地域ごとでの議論を


3つ目の視点が、 生活習慣病領域などで、ガイドラインや経済性を踏まえて、薬剤の採用基準や推奨度を明確化した薬剤のリスト“フォーミュラリ”を導入し、各地域で薬剤適正化を進めることだ。

財政制度等審議会は昨年、ARBを例にとり「費用対効果の導入と並行して専門家の知見を集約し、速やかに処方ルールにかかわるガイドラインの明確化を図る」と提示。これを受け、厚労省は、昨年11月の社会保障審議会医療保険部会に資料を示している。4月13日には、脂質異常症治療薬初の抗体医薬であるレパーサが承認された。効能・効果は、「家族性コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分な場合に限る」。マス市場の薬剤であるものの、但し書きで患者像を限定されている。こうした薬剤について、薬剤師が適正使用の一翼を担うことで、医師の処方適正化を図る。2016年度診療報酬改定では、患者の薬剤を一元管理する“かかりつけ薬剤師”が新たに導入されたが、各地域で薬剤師がこうした適正使用の推進に積極的にかかわることになる。さらに言えば、現在進められている医療ICTを通じたデータ分析がこうした薬剤師の職能発揮をサポートする時代の到来も近い。

これまで医療保険上の医薬品の価値は薬価で判断されてきた。しかし、高額薬剤の登場で、薬価だけで議論することが難しい時代に入った。2016年度診療報酬改定では重複投与や残薬を是正するための点数も明確化され、湿布薬の処方枚数の上限も設けられるなど、適正使用を打ち出したものとなった。製薬企業は、生活習慣病領域などで、絨毯爆撃的なプロモーションを行うことで一時代を築き上げてきた。しかし、すべての医療機関や医師に処方をうながすのでは、もはや通用しなくなるだろう。高齢化が進む中で、患者像も考慮した上で、いかに適正使用を推進すべきか。薬剤費抑制の観点からだけではない。製薬企業が、“医療への貢献”をどう果たすべきか。いま、その意味を問われている。(望月英梨)


 

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