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厚労省・後発品検討会が中間とりまとめ 増産対応で業界全体の安定供給に貢献する企業、薬価で評価を

公開日時 2023/10/12 04:52
厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」は10月11日、中間とりまとめを行い、業界全体の安定供給に貢献する企業を薬価制度上で評価することを提言した。自社の安定供給体制構築に加え、他社の出荷停止品目に対して増産対応を行うなど、安定供給に注力する企業を薬価上、“高い評価”とする。一方で、最低限の基準を満たさない場合には低い評価とするなど、メリハリをつける。中間とりまとめは、2024年度薬価制度改革に向け、中医協で議論が本格化するのを前に、「参考となるように、先立って」提言する位置づけ。安定供給の指標の重みづけなどの具体的な制度設計は、今後中医協で議論される見通し。

◎供給不安の理由で最多は「他社品の影響」 増産対応企業評価で供給不安解消へ

供給不安が長引いているが、限定出荷や供給停止の理由として「他社品の影響」をあげるケースが多い。背景には、ジェネリックメーカーの製造余力のなさがある。最大製造能力と同程度の製造数量(90%以上)で、生産計画を立てている企業の割合が半数を占めるなど、工場の稼働率が高い。このため、他社品が供給不安に陥った際に、増産で日本全体の製造量をカバーすることができない。むしろ、玉突きで限定出荷、出荷停止が起きる悪循環に陥っている状況にある。一方で、製薬業界からは、増産に向けた設備投資を行わない理由として、コスト回収の回収目途が立ちにくいことなどを指摘する声があがっていた。

中間とりまとめでは、安定供給などの企業情報を可視化し、「企業に求められる最低限の基準を満たさない場合には低い評価とし、当該基準を超えるような指標(業界全体の安定供給への貢献に関する情報)を満たす場合は高い評価とする、といったメリハリをつける」ことを提言した。「品質が確保された後発品を安定供給できる企業が市場で評価され、結果的に優位」となることを目指す。

◎可視化する企業情報に共同開発など 供給計画も踏まえて企業を評価

可視化する企業情報としては、①安定供給体制に関する情報(安定供給にかかわる責任者や担当者の有無、安定供給マニュアルの運用状況、共同開発の有無、製剤製造企業名(委託企業含む)、原薬製造国、供給不安発生時の事後対応等)、②供給状況に関する情報(自社品目の出荷状況、出荷停止や回収事例等)、③自社の情報提供状況に関する情報(医療関係者への情報提供の状況等)、④緊急時の対応手法に関する情報(余剰製造能力の確保又は在庫による対応等)、⑤業界全体の安定供給への貢献に関する情報(他社の出荷停止品目等に対する増産対応等)-をあげた。さらに、公表はせずに厚労省のみに提出する、供給計画や実績なども、企業評価に反映させる考え。

企業情報の可視化をめぐっては厚生労働省や日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)などが取り組みを進めているが、一部企業の公表にとどまっている状況にある。このため、情報を公表する企業側の負担を考慮し、経過措置を設けることも提案した。

◎既収載品の統合 増産行いやすいよう、一変申請の合理化検討を

構造的課題として少量多品目構造が指摘されるなかで、品目数の適正化に向けて、既収載品の統合を進めるとともに、新規収載品目を絞り込む方向性も示した。既収載品の統合に当たっては、製造販売を終了する品目の供給停止・薬価削除の手続きと、統合後に製造販売を続ける品目の増産が必要になる。増産をめぐっては、一部承認変更申請(一変申請)などが必要になるが、手続きに一定の期間がかかるため、品目統合を阻害する要因となっている。中間とりまとめでは、薬事上の課題として、「統合後の品目の増産が行いやすくなるよう、方法の変更にかかわる薬事審査等の合理化に係る検討を行うべき」と提言した。

供給停止や薬価削除の判断として、これまで医療現場からの要望が重視される傾向があったが、「一定の条件に該当する品目(医療上の必要性や市場シェアが低い等)について、医療現場への影響に配慮するとともに、採算性のみを理由とした供給停止がいたずらに発生しないよう留意しつつ、供給停止プロセスの合理化・効率化の検討を行うべき」とした。

また、銘柄数が増えた背景に共同開発などで、市場参入のハードルが下がったことが指摘されている。売り逃げなどをする企業もあったことから、安定供給に貢献しない企業の参入を抑制する方針も打ち出した。「企業に対し、安定供給にかかわる責任者の指定を求めるとともに、継続的に供給実績を報告させる仕組み等を検討すべき」と提言した。

中間とりまとめは、中医協で薬価、創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会で薬事の検討が進む中で、「これら会議体における検討の参考となるよう、先だって薬事・薬価に関係する事項について提言を行うもの」としている。検討会では今後も、後発品産業の構造的課題解消に向けて、「取り得る一連の施策について提言を行う予定」としている。

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